大腸がんの肝転移に対する肝臓切除後の補助化学療法、全生存期間を延長せず

文:がん+編集部

 大腸がんの肝転移に対する肝臓切除後の術後補助化学療法を検証した臨床試験の結果、全生存期間の延長は認められませんでした。

無病生存期間は改善するも全生存期間の改善がなく、化学療法を一律に推奨すべきではないと結論

 国立がん研究センターは9月27日、大腸がんの肝転移に対する標準治療である肝切除単独療法と肝切除後に補助化学療法を行う治療の優越性を検証したJCOG0603試験の結果を発表しました。

 は、JCOG(日本臨床腫瘍研究グループ)の大腸がんグループが行ったランダム化比較第2/3相試験です。日本の代表的な大腸がんの専門病院を中心に、標準治療である肝切除単独療法に対し、肝切除後に補助化学療法を行う治療の優越性が検証されました。

 対象者は、20~75歳の切除可能な肝転移がある大腸がん患者さんで、原発巣と肝転移の両方が根治切除され、肝転移が最初で唯一の再発であることが確認された患者さんです。また、全身状態が良好、CTまたはMRIで肝臓以外の転移がないこと、再発がないこと、オキサリプラチンによる化学療法歴がないこと、十分な臓器機能があり、臨床試験の参加3か月以内に、他の化学療法または放射線療法を受けていないことが適格基準でした。

 2007年3月~2019年1月までに300人の患者さんが、肝切除単独療法149人と肝切除に補助化学療法を行う151人に分けられました。第2相パートでは当初78人で行われましたが、mFOLFOX6療法(フルオロウラシル、レボホリナート、オキサリプラチン)の副作用による中止が多く起きたことから治療完遂割合を高めるため、治療変更基準の改訂が行われ、さらに78人が追加登録されました。

 中間解析で、肝切除後に補助化学療法を行った患者さんの方が、肝切除単独療法より無病生存期間が有意に長かったため、試験は早期に終了しました。しかし、全生存期間は、肝切除単独に比べて肝切除後の補助化学療法が下回る傾向でした。補助化学療法を受けた患者さんの約半数で重篤な有害事象を認め、グレード3以上の重篤な有害事象で最も多かったのは好中球減少50%、感覚神経障害10%、アレルギー反応4%でした。mFOLFOX6療法を3コース実施した後、1人の患者さんが死亡しました。

 5年間の解析による主な結果は以下の通りです。

無病生存割合
肝切除単独療法:38.7%
肝切除後の補助化学療法:49.8%

全生存割合
肝切除単独療法:83.1%
肝切除後の補助化学療法:71.2%

 今回のJCOG0603試験の結果発表に際し、展望として次のようにコメントされています。

 「本試験の結果、肝切除後のmFOLFOX6は無病生存期間を改善しましたが、それに伴う全生存期間の改善がないことから、化学療法を一律に推奨すべきではないと結論づけられました。これまで十分な根拠がないまま広く行われていた肝切除後の補助化学療法に対して歯止めをかけ、肝転移巣の大きさが大きくない場合には、肝切除後はそのまま経過観察する治療が第一選択として推奨されることになります。全生存期間の改善が見られない理由をより深く理解し、今後はどのような患者さんに対して化学療法を検討すべきかを明らかにする必要があります。わが国から発信する、肝切除後mFOLFOX6の意義に関する初の科学的エビデンスであり、本試験の結果により、日本だけでなく全世界の研究者に重要な情報を提供し、臨床が変わる可能性があります」