リムパーザ、BRCA遺伝子変異陽性の乳がんの術後化学療法として、希少疾病用医薬品に指定

2021/12/17

文:がん+編集部

 オラパリブ(製品名:リムパーザ)が、BRCA遺伝子変異陽性の乳がん患者さんに対する術後化学療法として、希少疾病用医薬品に指定されました。

OlympiA試験では、リムパーザが浸潤性乳がんの再発、二次がんまたは死亡のリスクを42%低減

 アストラゼネカは11月22日、BRCA遺伝子変異陽性の乳がん患者さんに対する術後化学療法として、オラパリブが希少疾病用医薬品に指定されたことを発表しました。今回の指定は、OlympiA試験の結果に基づくものです。

 OlympiA試験は、BRCA遺伝子変異陽性かつHER2陰性の高リスク早期乳がんで、根治的な局所治療および術前または術後補助化学療法を完了した患者さんを対象に、術後化学療法としてオラパリブとプラセボを比較した第3相試験です。主要評価項目は浸潤性疾患のない生存期間※1、主要な副次評価項目は全生存期間および遠隔無病生存期間※2でした。

 試験の結果、対象患者さん全体で、リムパーザが浸潤性乳がんの再発二次がんまたは死亡のリスクを42%低減することが示されました。3年時点で浸潤性乳がんまたは二次がんの発現なしで生存していた患者さんの割合は、プラセボで77.1%だったのに対し、リムパーザでは85.9%でした。

 また、主要な副次評価項目である遠隔転移を伴わない生存期間でも、統計学的に有意で臨床的に意義のある延長を示し、遠隔転移再発または死亡のリスクを43%低減しました。今回の初回の中間解析時点で、リムパーザは低い死亡率を示しましたが、全生存期間に統計学的有意差は認められませんでした。副次評価項目として全生存期間の評価は継続中です。

 安全性に関しては、これまでに認められた安全性プロファイルと一致していました。主な有害事象は、悪心(57%)、疲労(40%)、貧血(23%)および嘔吐(23%)でした。グレード3以上の有害事象は貧血(9%)、好中球減少(5%)、白血球減少(3%)、疲労(2%)および悪心(1%)でした。リムパーザの投与を受けた患者さんの約10%が、有害事象により投与を早期中止しました。

 同社の執行役員 研究開発本部長の大津智子氏は、次のように述べています。

 「今回の指定は、BRCA遺伝子変異を標的とした薬剤が、再発リスクが高い早期乳がんの術後薬物療法として初めて承認されるための大切な一歩です。これらの高リスク患者さんはがん再発への恐怖を依然として強く抱えています。がんが広がり生命を脅かす再発の確率を低減するために、リムパーザが新たな標準治療となることを期待しています」

※1 ランダム化から最初の再発(局所領域再発、遠隔再発、新規がん、または死因を問わない死亡)日までの期間と定義。
※2 ランダム化から乳がんの最初の遠隔再発(遠隔再発、新規がん、または死因を問わない死亡)日までの期間と定義。