カルケンス、イムブルビカと比較したELEVATE-RR試験の安全性に関する追加解析の結果がASH年次総会で発表

2022/01/31

文:がん+編集部

 再発または難治性の慢性リンパ性白血病を対象に、アカラブルチニブ(製品名:カルケンス)とイブルチニブ(製品名:イムブルビカ)を比較したELEVATE-RR試験の安全性に関する追加解析の結果が、第63回米国血液学会(ASH)年次総会で発表されました。

カルケンス、心血管毒性の軽減が期待でき忍容性の高い選択肢の一つ

 アストラゼネカは2021年12月12日、再発または難治性の慢性リンパ性白血病に対し、アカラブルチニブを評価したELEVATE-RR試験の安全性に関する追加解析の結果をASH年次総会で報告したことを発表しました。

 ELEVATE-RR試験は、少なくとも一度の治療歴がある再発または難治性の慢性リンパ性白血病で予後因子(17p欠失または11q欠失、あるいはその両方の欠失が認められる場合)を伴う患者さん533人を対象に、アカラブルチニブとイブルチニブを比較した第3相試験です。主要評価項目は無増悪生存期間、副次的評価項目は心房細動の発現率、グレード3以上の感染症の発現率、リヒター形質転換(慢性リンパ性白血病が悪性度の高いリンパ腫に変化する病態)の発現率、全生存期間などでした。

 ELEVATE-RR試験の結果は、2021年6月7日の米国臨床腫瘍学会年次総会で初めて発表されましたが、有害事象に関する追加解析の結果をASH年次総会で発表。追跡解析の結果、全グレードの有害事象の発現は、イブルチニブの方がアカラブルチニブより37%高値でした。全グレードの心房細動/心房粗動の発症までの期間の中央値は、アカラブルチニブ28.8か月、イブルチニブ16.0か月でした。年齢、前治療ライン、心合併症の既往歴のない患者さんのいずれのサブグループでも、全グレードの心房細動/心房粗動の発現率はアカラブルチニブで低値でした。

 Peter MacCallum Centre およびRoyal Melbourne Hospital の医師でありELEVATE-RR試験の治験責任医師であるJohn F. Seymour博士は、次のように述べています。

 「再発または難治性の慢性リンパ性白血病患者さんは、高齢で重い併存疾患を抱えている場合が多いため、疾患管理を上手に行うための選択肢が限られています。心臓の有害事象のリスクは、重大な病的状態を引き起こす場合があり、また患者さんの治療中止にもつながるため、特にブルトン型チロシンキナーゼ阻害薬による治療が行われる際には重要な考慮事項です。ELEVATE-RR試験のデータから、カルケンスは心血管毒性の軽減が期待できる、忍容性の高い選択肢の一つであるという説得力のあるエビデンスが得られました。この薬剤を処方することで、有害事象のために治療を中止する患者さんが減ることが期待され、治療判断が複雑な状況においても疾患の管理を継続でき、臨床医にさらなる安心感を与えることになると期待しています」