「がん治療における患者さん中心の意思決定支援」、メディアセミナー開催
2022/02/15
文:がん+編集部
武田薬品工業は2月2日、「がん治療における患者さん中心の意思決定支援」をテーマにメディアセミナーを開催。全国がん患者団体連合会の天野慎介理事長が座長を務め、国立がん研究センター中央病院呼吸器内科外来医長の後藤悌先生、川崎市立井田病院化学療法センター医長 腫瘍内科 緩和ケア医で一般社団法人プラスケア代表理事の西智弘先生がそれぞれ講演。「がん患者さんの「生きる」を支えるために必要な支援」についてフリーディスカッションも行われました。
個別化医療の進展に伴い、早期に緩和ケアを開始し、患者さん中心の話し合いの場を
まず後藤先生が、「肺がんの個別化医療の進展に伴う治療選択の複雑さと意思決定支援の重要性」について講演。
「近年、がんの医療技術の進歩は著しく、特に肺がん領域では、がんの遺伝子変異タイプに合わせて最適化・個別化された治療を行うがんゲノム医療が進んでいます。また、免疫チェックポイント阻害薬など、新たな治療選択肢も加わりました。がんゲノム医療の進展により、がん患者さん1人ひとりに求められる支援も細分化しています。一方で、遺伝子変異が見つかっても、治療法がないという患者さんもおられ、課題となっています」と述べました。
次に、西先生が「がんになった自分を支える3つの柱」をテーマに緩和ケアに関して講演。
「現在は、積極的治療を希望する患者さんの生き方に応えられる時代となりました。患者さんが、治療中も社会の一員として役に立っていることを実感できる生き方を、どれだけ長期間維持できるかも患者さん自身を支える1つの柱です。患者さんがどのように生きていきたいか、患者さんを主体に、医療者や家族が一緒に考えていくことが大切です」と述べました。
また、「ACP(Advance Care Planning、人生会議)」の在り方について、西先生は次のように述べました。
「ACPは、がんになってから始めるのではなく、普段の会話の中からも価値観や死生観を探るような形が理想的です。病院や医療制度の枠を超えて、医療者と気軽につながれる場場所や、社会の仕組みをつくっていく取り組みも今後期待されます」
最後に、後藤先生と西先生はそれぞれ、次のようにセミナーを締めくくりました。
「副作用が少ない治療法も登場し、診断時から治療と仕事の両立が可能な時代です。社会全体で、がんをどう支えていくかを考えていく必要があります」(後藤先生)。
「現状は、さまざまなプレッシャーを感じながら患者さんは意思決定をしなければいけません。日常の延長の中でACPを行うなど、従来の緩和ケアに対する社会のなかでの誤解を解いていきたいと考えています」(西先生)。