第3世代のがん治療用ヘルペスウイルス「デリタクト」、前立腺がんに対する臨床試験を開始
2022/03/01
文:がん+編集部
前立腺がんに対し、第3世代のがん治療用ヘルペスウイルスG47Δ(一般名:テセルパツレブ、製品名:デリタクト)を評価する第2相試験が開始されました。
ホルモン療法併用によるデリタクトの有効性(再発率)と安全性を評価
杏林大学医学部付属病院は2022年2月14日、転移性前立腺がん患者さんを対象に、テセルパツレブとホルモン療法を併用する臨床試験「前立腺癌に対するG47∆を用いたウイルス療法」を開始することを発表しました。
今回の臨床試験は、ホルモン療法未治療の転移性前立腺がん患者さんを対象に、テセルパツレブとホルモン療法併用療法を評価する第2相試験です。主要評価項目は1年後の無増悪生存割合、副次的評価項目は1年後の生存割合、全生存期間、有害事象発生割合、重篤有害事象発生割合などです。募集人数は、30人の予定です。
テセルパツレブは、単純ヘルペスウイルスⅠ型の3つのウイルス遺伝子に改変を加えて作製された、世界初の第3世代のがん治療用の遺伝子組換えヘルペスウイルスです。テセルパツレブは、がん細胞だけに感染し増殖し、感染したがん細胞を死滅させます。増殖したテセルパツレブは、さらに周囲のがん細胞に感染し、ウイルス増殖→細胞死→感染を繰り返してがん細胞を次々に破壊していきますが、正常細胞では増殖できないように作られているため正常細胞が傷つくことはありません。また、複製して増えたテセルパツレブが、破壊したがん細胞とともに免疫に排除される過程で、がん細胞が免疫に非自己として認識されて、抗がん免疫が惹起されるため、テセルパツレブを投与した部位のみならず、遠隔のがんに対しても免疫を介して治療効果が期待できます。テセルパツレブは、がんの根治を阻むとされるがん幹細胞をも効率よく破壊することがわかっています。
テセルパツレブは、2021年6月に悪性神経膠腫を適応症とした再生医療等製品として製造販売が承認され、8月には薬価も収載されています。
杏林大学医学部付属病院は今回の臨床試験の開始に際し、次のように述べています。
「G47∆は、全ての固形がんに共通のメカニズムでがん細胞を破壊する治療法であり、今回当院泌尿器科で行う臨床試験では、まだ治療を受けていない、転移のある前立腺がんの患者が対象となります。ホルモン療法を併用して、再発率をどの程度抑制するのかを調べるのが今回の臨床試験の目的です。今回の臨床試験は、有効性を検討するための第2相試験となります」