「ニュベクオ+ADT+ドセタキセル」、転移性ホルモン感受性前立腺がんに対し全生存期間を延長

2022/03/04

文:がん+編集部

 転移性ホルモン感受性前立腺がんを対象に、「ダロルタミド(製品名:ニュベクオ)+アンドロゲン遮断療法(ADT)+ドセタキセル」併用療法を評価したARASENS試験の結果、全生存期間の有意な延長が認められました。

「ニュベクオ+ADT+ドセタキセル」、「ADT+ドセタキセル」と比較して死亡リスクを32.5%低下

 独バイエル社は2022年2月17日、転移性ホルモン感受性前立腺がん患者さんを対象に、第二世代の経口アンドロゲン受容体阻害薬ダロルタミドを、ADT+ドセタキセルに追加した併用療法を評価したARASENS試験の結果を発表しました。

 ARASENS試験は、転移性ホルモン感受性前立腺がん患者さん1,306人を対象に、「ダロルタミド+ADT+ドセタキセル」併用療法と「ADT+ドセタキセル」併用療法を比較した第3相試験です。主要評価項目は全生存期間、副次的評価項目は去勢抵抗性前立腺がんに進行するまでの期間、次の抗がん剤治療を開始するまでの期間、オピオイド初回仕様までの期間、疼痛増悪までの期間、身体症状悪化までの期間、有害事象などでした。

 解析の結果、「ダロルタミド+ADT+ドセタキセル」併用療法では「ADT+ドセタキセル」併用療法と比較して、死亡リスクを32.5%低下させ、全生存期間の有意な延長が認められました。また、「ダロルタミド+ADT+ドセタキセル」併用療法では、副次評価項目および事前に規定したサブグループで一貫して良好な結果が得られました。

 「ダロルタミド+ADT+ドセタキセル」併用療法と「ADT+ドセタキセル」併用療法で、最も認められた有害事象は、脱毛症(40.5%/40.6%)、好中球減少症(39.3%/38.8%)、疲労(33.1%/32.9%)、貧血(27.8%/25.1%)でした。また、それぞれの併用療法で認められたグレード3または4の主な有害事象は、好中球減少症(33.7%/34.2%)でした。重篤な有害事象はそれぞれ44.8%および42.3%で発現し、投与中止に至ったのはそれぞれ13.5%および10.6%でした。

 マサチューセッツ総合病院がんセンターの泌尿生殖器悪性腫瘍プログラム責任者であるマシュー・スミス氏は、次のように述べています。

 「転移性ホルモン感受性前立腺がんは命に関わる重篤な疾患です。この数年間で、治療が進展したにも関わらず、5年以上生存している患者さんは30%のみです。ARASENS試験では、転移性ホルモン感受性前立腺がんの初期治療として、標準治療であるADT+ドセタキセルにアンドロゲン受容体阻害薬のダロルタミドを追加することにより、全生存期間が有意に延長されました。また、ダロルタミドは、去勢抵抗性前立腺がん進行までの期間など主要な副次評価項目において良好な結果を示しました。これらの結果は転移性ホルモン感受性前立腺がんの患者さんの治療にとって重要な前進です」