2つのオプジーボ併用療法、切除不能な進行・再発または転移性食道がんの一次治療薬としてECが承認
2022/05/06
文:がん+編集部
PD-L1発現レベルが1%以上の切除不能な進行・再発または転移性食道扁平上皮がん患者さんに対する一次治療薬として、ニボルマブ(製品名:オプジーボ)の2つの併用療法を欧州委員会(EC)が承認しました。「ニボルマブ+化学療法(フルオロウラシルおよびシスプラチン)」併用療法と「ニボルマブ+イピリムマブ(製品名:ヤーボイ)」併用療法の2つです。
化学療法と比較して死亡リスクを「オプジーボ+化学療法」は46%低減、「オプジーボ+ヤーボイ」は36%低減
ブリストル マイヤーズ スクイブ社は4月5日、PD-L1発現レベルが1%以上の切除不能な進行・再発または転移性食道扁平上皮がんの成人患者さんに対する一次治療薬として、2つのニボルマブ併用療法をECが承認したことを発表しました。今回の承認は、CheckMate-648試験の結果に基づくものです。
CheckMate-648試験は、未治療の切除不能な進行、再発または転移性食道扁平上皮がん患者さん970人を対象に、「ニボルマブ+イピリムマブ」または「ニボルマブ+化学療法」を化学療法と比較した第3相試験です。主要評価項目はPD-L1発現レベルが1%以上の患者さんに対する2つのニボルマブ併用療法と化学療法を比較した全生存期間、無増悪生存期間、副次評価項目はITT集団※に対する全生存期間、無増悪生存期間などです。
中間解析の結果、PD-L1発現レベルが1%以上の患者さんに対する全生存期間は、「ニボルマブ+化学療法」が、化学療法と比較して、統計学的有意にかつ臨床的に意義のある改善を示し、死亡リスクを46%低減。「ニボルマブ+イピリムマブ」でも化学療法と比較して、統計学的有意にかつ臨床的に意義のある改善を示し、死亡リスクを36%低減しました。安全性に関しては、これまでに報告されている安全性プロファイルと一貫していました。
主な試験の解析結果は、以下の通りです。
PD-L1発現レベルが1%以上の患者の全生存期間(中央値)
「ニボルマブ+化学療法」:15.44か月
「ニボルマブ+イピリムマブ」:13.70か月
化学療法:9.07か月
PD-L1発現レベルが1%以上の患者の無増悪生存期間(中央値)
「ニボルマブ+化学療法」:6.93か月
「ニボルマブ+イピリムマブ」:4.04か月
化学療法:4.44か月
全奏効率
「ニボルマブ+化学療法」:53.2%
「ニボルマブ+イピリムマブ」:35.4%
化学療法:19.7%
安全性(がん腫を問わない統合データに基づく)グレード3~5の副作用の発現率
「ニボルマブ+化学療法」:76%
「ニボルマブ+イピリムマブ」:62%
肺炎、発熱性好中球減少症、血栓症、肺臓炎、下痢、腎不全を含む致死的な副作用が、「ニボルマブ+化学療法」の1.4%で発現
肺臓炎を含む致死的な副作用が「ニボルマブとイピリムマブ」の1.0%で発現
同社の消化器がん領域開発責任者であるIan M. Waxman医師は、「ニボルマブ+化学療法」の承認に関して次のように述べています。
「進行食道扁平上皮がんが極めて悪性度の高いがんであることからも、この承認は欧州連合の患者さんにとって重要な進展であると言えます。オプジーボと化学療法の併用療法は、新たに承認されたオプジーボによる2つの併用療法のうちの1つであり、化学療法単独と比較して、良好な全生存期間のベネフィットを示したことで、PD-L1発現レベルが1%以上の切除不能な進行、再発または転移性食道扁平上皮がん患者さんにより大きな希望をもたらします。この新しい治療選択肢を欧州連合の患者さんに届け、生存アウトカムを改善できればと強く願っています」
また、「ニボルマブ+イピリムマブ」の承認に関しては、次のように述べています。
「オプジーボとヤーボイの併用療法は、欧州連合で新たに承認されたオプジーボによる2つの併用療法のうちの1つであり、この患者集団において化学療法単独を上回る生存ベネフィットを示しました。食道扁平上皮がんは極めて悪性度の高いがんであり、進行するにつれて治療がより一層困難になります。進行患者さんのファーストライン治療でオプジーボとヤーボイの併用療法が使用可能になることで、化学療法単独と比較して、患者さんの生存アウトカムを改善できる可能性があります」
※ITT(intention to treat)集団:臨床試験中に、治療から脱落した患者さんも含めた集団。