HPVワクチン接種9年後の感染予防効果を確認

2022/05/27

文:がん+編集部

 HPVワクチン接種9年後の感染予防効果を確認。接種から約9年経過した25歳の時点でHPV16/18型の感染者は認められず、長期の予防効果が実証されました。

研究成果をもとに、厚労省は12~16歳女子に対するHPVワクチン接種の積極的勧奨を再開

 新潟大学は2022年5月10日、高リスク型ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染に対し、HPVワクチンがどの程度長期の予防効果を示すかを検討し、HPVワクチン接種9年後の感染予防効果を確認し報告したことを発表しました。同大大学院医歯学総合研究科産科婦人科学分野の黒澤めぐみ医師、榎本隆之特任教授、関根正幸准教授らの研究グループによるものです。

 研究グループは、23~26歳は性的活動性が最も高まり、高リスク型HPV感染率がピークに達する時期であることを先行研究で明らかにしていました。さらに、HPVワクチンの接種を受けた20~22歳の女性では、HPV16/18型感染に対する高い有効性と、HPV31/45/52型に対するクロスプロテクション効果(ワクチンが、標的としたウイルス株とは異なるウイルスにも感染予防効果を発揮すること)が認められることを報告していました。しかし、25歳以降の女性に対する長期的なHPVワクチンの有効性に関する報告は日本ではありませんでした。

 そこで研究グループは、1993~94年に出生し2019年4月~20年3月に新潟市内で子宮頸がん検診とHPV検査を受けた25~26歳の女性429人に対し、HPVワクチン接種歴と性的活動性(初回性交年齢、性交経験人数)は質問票により調査。対象者のうち150人(35.0%)にHPVワクチンの接種歴があり、279人(65.0%)は接種歴がありませんでした。HPVワクチン接種からHPV検査までの平均期間は102.7か月(中央値103か月)で、ワクチン接種グループと非接種グループで初回性交年齢および過去の性交経験人数に有意差はありませんでした。

 両グループを比較した結果、高リスク型HPVのうち2価ワクチンが標的とする16/18型の感染率は、ワクチン非接種グループの5.4%に対してワクチン接種グループでは0%と有意に低く、ワクチンの有効率は100%であることが示されました。また、HPV31/45/52型の感染率も、ワクチン非接種グループの10.0%に対してワクチン接種グループでは3.3%と有意に低く、有効率は69.0%とクロスプロテクション効果も持続していることが示されました。

 研究グループは今後の展開として、次のように述べています。

 「本研究グループの研究成果をもとに、厚生労働省は2022年4月より12~16歳女子に対するHPVワクチン接種の積極的勧奨を再開しました。まだHPVワクチンの接種を受けていない女性に対しては、このような科学的根拠をもとに、ワクチンの効果を強くアピールしていく必要があります。また、HPVワクチンの接種を受けた女性に対しては、ワクチンのHPV感染予防効果は25歳になると消失するわけではないが、ワクチンを接種した女性でも子宮頸がん検診は必ず受ける必要があるというメッセージを伝えていくことが必要です。今後NIIGATA studyでは、25歳時点での子宮頸部前がん病変の発症予防に対する有効性と、30歳時点でのさらなる長期効果の解析を継続し、国民の皆様への発信を続けていく予定です」