ゲノムデータを利用した膵臓がんの外科切除後の新しい予後予測モデルを開発

2022/06/08

文:がん+編集部

 膵臓がんのゲノムデータを解析し、臨床データと集約することで、膵臓がんの外科切除後の新しい予後予測モデルが作成されました。膵臓がんの治療決定の新たなツールとして期待されます。

従来の膵臓がんの診療方針の決定に、革新的な変化をもたらすことが期待される研究成果

 北海道大学は2022年5月24日、膵臓がんのゲノムデータを利用した、外科切除後の新しい予後予測モデルを作成したことを発表しました。同大大学院医学院消化器外科学教室II博士課程の小野雅人氏、同大大学院医学研究院の中村透助教、平野聡教授らの研究グループと旭川医科大学内科学講座の水上裕輔教授、札幌東徳洲会病院医学研究所の小野裕介部門長、東北大学大学院医学系研究科病態病理学分野の古川徹教授らとの共同研究によるものです。

 共同研究グループは、膵臓がん術後長期生存者32人と術後早期再発し死亡した34人のゲノム解析を実施。変異データを集約し、臨床データを含め比較検討した結果、がん抑制遺伝子TP53の変異形式が予後に関連する可能性があることが判明しました。また、同変異形式とSMAD4変異の有無に加え、腫瘍マーカー「CA19-9」の値を用いた新規の予後予測モデルを作成。長期生存例11人と早期再発死亡例10人の膵臓がん術後検体を用いて、同モデルの有効性を確認しました。

 共同研究グループは今後への期待として、次のように述べています。

 「本研究により、画像診断や臨床病理学的な情報に基づいて決定してきた従来の膵がんの診療方針に革新的な変化をもたらすと期待されます。最も効果的で適切な治療を患者さんに提供できることは勿論、効果の乏しい化学療法の回避や、多くの医療資源を投入する手術治療の回避を通して、高騰する我が国の医療費の削減や、限られた医療資源の有効活用という点で、社会に与えるインパクトは大きいと考えられました」