慢性骨髄性白血病の治療薬「セムブリックス」、国内販売を開始
2022/06/09
文:がん+編集部
慢性骨髄性白血病の治療薬、STAMP阻害薬「アシミニブ(製品名:セムブリックス)」の国内販売が開始されました。
セムブリックス、ボシュリフと比較した治験でほぼ2倍の優越性を示す
ノバルティス ファーマは2022年5月25日、「前治療薬に抵抗性または不耐容の慢性骨髄性白血病」に対する治療薬として、アシミニブを発売したことを発表しました。
慢性骨髄性白血病は、チロシンキナーゼ阻害薬による通院治療が可能ですが、約半数の患者さんでチロシンキナーゼ阻害薬の薬剤耐性が起こったり、副作用により治療の継続ができなくなります。そのため、初期治療で使用されたチロシンキナーゼ阻害薬の変更を余儀なくされ、治療選択に限りがあるという課題があります。
アシミニブは、ABLミリストイルポケットを標的したSTAMP阻害薬です。2剤以上のチロシンキナーゼ阻害薬の前治療がある慢性骨髄性白血病の患者さんの治療抵抗性に対処し、BCR-ABL1遺伝子変異を克服できる可能性があると考えられています。アシミニブは、ASCEMBL試験の結果に基づき承認されました。
ASCEMBL試験は、2剤以上のチロシンキナーゼ阻害薬による前治療歴があり、直近のチロシンキナーゼ阻害薬による治療に抵抗性、または不耐容な慢性期の慢性骨髄性白血病患者さん233人を対象に、アシミニブとボスチニブ(製品名:ボシュリフ)を比較した第3相試験です。主要評価項目は24週時点の分子遺伝学的大奏効※率、主要な副次評価項目は96週時点の分子遺伝学的大奏効率でした。
試験の結果、主要評価項目である24週時点の分子遺伝学的大奏効率では、アシミニブ25%とボスチニブ13%で、ほぼ2倍で主要目的を達成しました。
副作用により治療を中止した患者さんの割合(48週時点)は、アシミニブ7%、ボスチニブ25%でした。発現率20%以上の最も多く認められたアシミニブの副作用(48週時点)は、血小板減少症(29.5%)、好中球減少症(23.1%)、ボスチニブは下痢(71.1%)、悪心(46.1%)、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)の増加(28.9%)、嘔吐(26.3%)、発疹(23.7%)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)の増加(21.1%)、好中球減少症(21.1%)でした。
同社の代表取締役でもあるレオ・リーは、次のように述べています。
「慢性骨髄性白血病治療はこの20年間でめざましい進歩を遂げていますが、これまでのチロシンキナーゼ阻害薬治療では効果が十分に得られていない、また副作用により日常生活に支障を来すような患者さんもいらっしゃいます。今回のセムブリックス発売により、こうした患者さんにも新しい治療選択肢を提供することが可能になったことを大変嬉しく思います。ノバルティスは患者さんの治療、生活の質の向上に貢献することを目指して、今後も、慢性骨髄性白血病治療に真剣に取り組んでまいります」
※BCR-ABL遺伝子が0.1%以下の状態