45歳未満の女性の肥満、日本人では乳がん発生リスクが低い

2022/06/28

文:がん+編集部

 国内の大規模医療データベースを使い、BMIと乳がん発生との関連を調査。45歳未満の女性の肥満は、乳がんの罹患リスクが低いことがわかりました。

東アジアでは閉経前から乳がんになりやすく、肥満がリスクとなる閉経後乳がんは比較的少ないと推測

 東大病院は2022年6月7日、国内の大規模医療データベースを使い、BMIと乳がん発生との関連を調査した結果を発表しました。東京大学大学院医学系研究科の小西孝明(医学博士課程)、田辺真彦准教授、康永秀生教授、瀬戸泰之教授らの研究グループによるものです。

 欧米ではBMIが大きいと閉経前に乳がんにかかるリスクが低いとされています。日本を含む東アジアでは、BMIと乳がん発生リスクの関連性は不明とされ、罹患リスクが高い可能性も指摘されていました。また、欧米では70歳代で、最も乳がん罹患率が高くなりますが、東アジアでは40歳代以降は、乳がんの罹患率は横ばいか減少傾向にあります。

 研究グループは、国内の大規模医療データを使い、2005年1月~2020年4月までに健康診断でBMIを測定した45歳未満の女性78万5,703人を解析対象として調査を行いました。1,034日の観察期間(中央値)で、5,597人(0.71%)が乳がんと診断されていました。喫煙や飲酒などの背景因子を調整した上で、BMIと乳がん発生との関連を解析した結果、BMIが22kg/m2以上だと乳がんに罹るリスクが有意に低いことが明らかになりました。また、ホルモン受容体陽性の乳がんでも同様の関連が認められましたが、HER2陽性の乳がんでは、関連は認められませんでした。

 研究グループは社会的意義として、次のように述べています。

 「本研究では、45歳未満の女性においてBMIが22kg/m2以上では乳がんのリスクが低いことを示しました。90%以上の日本人女性は45歳以降に閉経を迎えるとされていることから、東アジアにおいてBMI閉経前乳がんに及ぼすリスクが欧米と同様であることを初めて示したと言えます。乳がんにかかる年齢のピークは東アジア(40~50歳代)と欧米(70歳代)で異なることが知られており、その原因は分かっていませんでした。本研究の結果に基づけば、肥満者が少ない日本を含む東アジアでは閉経前の40歳代から乳がんになりやすい一方で、肥満がリスクとなる閉経後乳がんは比較的少ないものと推測できます。そのため、人口の BMI分布に基づいたがん検診の戦略が求められます。また、乳がんの中でもホルモン受容体陽性乳がんで強い関連が認められたことから、乳がんの発生にBMIに関連するホルモンが強く関与していることが示唆されます。未だ不明な乳がん発生のしくみの解明に寄与することが期待されます」