細胞にかかるストレスが、がんを発生させるメカニズムを解明
2022/06/29
文:がん+編集部
細胞にかかるストレスが、がんを発生させるメカニズムが解明されました。さまざまな病気の原因解明につながる研究成果で、将来的には病気の予防や治療ができるようになると考えられます。
病気の原因解明・予防・治療法を開発するための基盤となる発見
東京大学は2022年6月7日、紫外線や低温刺激などのストレスが、がんを発生させるメカニズムを解明したことを発表しました。同大学大学院医学系研究科の安原崇哲助教、マサチューセッツ総合病院のLee Zou教授らの国際共同研究グループによるものです。
細胞はさまざまなストレスを受けることでDNAが損傷することがあり、それが原因となりがんなどの病気を発症することがあります。DNAには損傷を修復する仕組みがあるため、普通はがんになることはありません。しかし、DNAが切断され、異なるDNA同士がつながると異常なDNAができてしまうことがあります。こうしたDNA異常は、「遺伝子融合」と呼ばれており、がんの発生や進展、病態に深くかかわっています。非小細胞肺がんの原因遺伝子異常の1つとして知られている「ALK融合遺伝子」もその1つです。切断された複数のDNA同士が近づいていると、このような間違いが生じやすいと考えられていますが、そのメカニズムはわかっていませんでした。
研究グループは、細胞に紫外線や抗がん剤処理、低温刺激などをすると、タンパク質とRNAからなる「かたまり」が細胞内にでき、タンパク質の設計図に異常が生じやすくなることを発見。実際に、遺伝子領域にDNA二重鎖切断を誘導すると、「かたまり」ができた細胞では、遺伝子融合の発生頻度が上昇することが確かめられました。将来的には、今回の発見がさまざまな病気の原因の解明につながり、病気を予防、治療する方法を開発するための基盤となることが期待されます。