PI3Kδ阻害薬ザンデリシブ、B細胞悪性腫瘍に対するTIDAL試験のデータがEHA2022で発表

2022/07/04

文:がん+編集部

 B細胞悪性腫瘍の経口薬として開発中のPI3Kδ阻害薬「ザンデリシブ」を評価する「TIDAL試験」のデータが、2022年欧州血液学会議(EHA)で発表されました。

TIDAL試験の有効性解析の結果、全奏効率70.3%、完全奏効率35.2%

 協和キリンとMEI Pharmaは2022年6月10日、PI3Kδ阻害薬「ザンデリシブ」を評価する「TIDAL試験」のデータを、EHA2022の口頭およびポスターセッションで報告したことを発表しました。

 TIDAL試験 は、再発または難治性の濾胞性リンパ腫と再発または難治性の辺緑帯リンパ腫患者さんを対象に、ザンデリシブを評価する2つのパートで構成された第2相試験です。化学療法や抗CD20抗体を含む2回以上の全身治療歴がある患者さんを対象としています。導入療法としてザンデリシブを1日1回2サイクル投与し、その後は各サイクルの最初の7日間だけ1日1回投与する間歇投与が行われました。主要評価項目は全奏効率、副次的評価項目は奏効期間、完全奏効率、無増悪生存期間、全生存期間、有害事象発生率などです。

 濾胞性リンパ腫コホートの登録は完了し、辺縁帯リンパ腫コホートの登録は継続して行われています。濾胞性リンパ腫コホートでは121人が登録され、そのうち91人が全奏効率と奏効効期間を評価するための解析対象とされました。

 全奏効率の解析結果は70.3%、そのうち完全奏効率は35.2%、難治性患者さんの奏効率は64.3%、前治療歴が2回以上の患者さんの奏効率は63.3%、POD24患者さんの奏効率は66.7%でした。

 全奏効患者さんのうち投与開始後2サイクルで奏効したのが 87.5%、完全奏効を得られた患者さんのうち75%が最初の4サイクルで完全奏効し、病勢コントロール率は85%でした。データカットオフ日時点では追跡期間が不十分なため、最終的な奏効期間の正確な算出には至っていません。

 安全性に関しては、治療に関連した有害事象による投与中止が9.9%でした。10%以上の頻度で認められた有害事象は、下痢、好中球減少、吐き気、疲労、腹痛、発熱、食欲減退、便秘、発疹、貧血でした。また、グレード3の注目すべき有害事象の発現率は、下痢が 5%、大腸炎が1.7%、皮疹が3.3%、粘膜炎が2.5%、ALT/AST上昇と非感染性肺炎がそれぞれ 0.8%でした。グレード3の注目すべき有害事象は、主に第1~3サイクル目で発現しました。グレード4また 5の注目すべき有害事象は認められませんでした。

 第2相試験(TIDAL試験)の口頭発表者であり、第3相試験(COASTAL試験)の治験責任者であるMaria Sklodowska-Curie National Research Institute of Oncology の Wojciech Jurczak医学博士は、次のように述べています。

 「濾胞性リンパ腫のような低悪性度非ホジキンリンパ腫の患者の多くは、現在の標準治療にて持続的な効果を得られますが、一般的に再発を繰り返すため複数の治療を継続的に行うことが必要であり、新しい治療オプションの開発が求められています。今年のEHAで発表されたデータは、特にザンデリシブとリツキシマブの併用を評価する第3相試験の登録を継続する中で、ザンデリシブの開発プログラムを後押しするデータです」

※初発治療後24か月以内に病勢進行