京都市が保有するデータを解析、肺がん患者さんの背景、初回治療内容、生存期間、治療の医療費などの調査結果を発表

2022/08/16

文:がん+編集部

 京都市が保有するデータを解析し、新たに肺がんと診断された患者さんの背景、初回治療内容、生存期間、各治療の医療費などを算出した調査結果が発表されました。

2年生存率は改善傾向、薬物療法の医療費が著しく増加

 京都大学は2022年7月28日、京都市が保有する統合データを用い、新規発症の原発性肺がん患者さんの背景、初回治療内容、生存期間、各治療の医療費を算出した調査結果を発表しました。同大学医学研究科の石見拓教授、中山健夫教授、島本大也特定助教、立山由紀子 特定助教、小林大介環境安全保健機構助教、高橋由光医学研究科准教授、植嶋大晃国際高等教育院特定講師、佐々木康介医学研究科大学院生らと、京都市、アストラゼネカ、ヘルステック研究所の共同研究グループによるものです。

 研究グループは、京都市が保有する国民健康保険、後期高齢者医療制度加入者の医療レセプト、健診結果、介護認定情報、介護レセプトなどを統合したデータベースを解析。研究の対象となったのは、4,845人で平均年齢は73歳でした。

 解析の結果、初回治療として手術を受けた患者さんの割合が35.2%から39.6%まで経年的に増加していました。また、2年以内に亡くなった患者さんの割合は2013年度42.7%から2016年度の36.8%まで改善していました。全ての肺がん患者さんの年間医療費の合計は、手術、薬物療法、放射線療法それぞれの治療法で経年的に増加しており、特に薬物療法の医療費が3億8,611万3000円から6億639万7000円へと著しく増加していました。さらに、2015年度以降は免疫チェックポイント阻害薬の使用者数と費用が増大し、2018年度には薬物療法費用全体の約60%を占めているという結果が示されました。

 研究グループは波及効果今後の予定として、次のように述べています。

 「本研究は自治体が管理しているデータベースの解析研究であり、同様の解析はあらゆる自治体において可能であると考えます。自治体が専門家と協力して施策の評価を行うモデルケースとして同様の取り組みが広がることで、今後様々な自治体における施策の客観的評価及び改善につながる可能性があります。本研究は肺がんをテーマにした統合データ解析研究の第 1 弾であり、今後は肺がんの治療内容ごとの予後を直接比較する研究や、肺がん検診の実態や効果を検討する研究を実施、発表していく予定です」