成人T細胞白血病リンパ腫に対する新しい診断方法の開発に向けた取り組みを開始

2022/08/26

文:がん+編集部

 成人T細胞白血病リンパ腫に対する新しい診断方法の開発に向けた取り組みが開始されました。

成人T細胞白血病リンパ腫および関連疾患の早期診断や治療技術の開発のための研究

 大阪国際がんセンターは2022年8月22日、成人T細胞白血病リンパ腫に対する新しい診断方法の開発に向け、成人T細胞白血病リンパ腫のデータベースの質を高める新たな基盤研究を開始したことを発表しました。

 同がんセンターは、2021年5月から厚生労働省のクリニカル・イノベーション・ネットワーク推進支援事業による補助金を受け、希少がんである成人T細胞白血病リンパ腫のデータベースを整備して、早期診断や新たな診断指標の探索、それを活用した診断法を開発する研究を企業と共同で開始。その研究成果を受け、2022年5月25日からは一部共同研究先を変更して、成人T細胞白血病リンパ腫のデータベースの質を高める新たな基盤研究を開始しました。

 成人T細胞白血病リンパ腫は、HTLV-1というウイルスが原因で発症する希少な血液がんの1つで、近年大阪で増加傾向となっています。成人T細胞白血病リンパ腫には、「くすぶり型」「慢性型」「急性型」「リンパ腫型」の4病型に分類され、「急性型」を除いて早期の段階で診断することは難しく、治療成績を上げることができていません。

 こうした現状を改善するため、本研究では成人T細胞白血病リンパ腫データベースを活用した研究を進めることで、早期の段階で的確に診断する方法の開発が行われます。さらに、データベースで得られた情報から治療標的を推定することで、成人T細胞白血病リンパ腫の治療薬の開発を目指します。

 今年度は引き続き、本データベース情報の利活用をさらに推進するために、利用を検討している企業の関心も高いと考えられる患者さんの普段の病態を入力できるアプリの開発や、入力データを同じクラウドで登録できる充実したシステムが構築されます。その他にも昨年度からの継続で新規のバイオマーカーの情報としてmiRNAやペプチドマーカーなどのデータも格納できる体制が整備されます。

 同センターは、次のように述べています。

 「今後、さらなる医療機関の参加と企業による成人T細胞白血病リンパ腫データベースの利活用、共同研究を促し、成人T細胞白血病リンパ腫および関連疾患の早期診断や、治療技術の開発のための研究を進めてまいります。また、成人T細胞白血病リンパ腫治療成績向上を目指す大阪モデルとして、早期リスク診断法と予防法などの保健行政への提言を目標としています。そして、地域医療機関や行政と連携することで成人T細胞白血病リンパ腫の啓発を高め、成人T細胞白血病リンパ腫の早期診断と早期治療を実践し、成人T細胞白血病リンパ腫根絶を目指します」