がんの不均一性を克服する新たな治療法「スマート武装抗体 (Smart ADC)」を開発
2022/09/09
文:がん+編集部
がんの不均一性を克服する、新たな治療法「スマート武装抗体 (Smart ADC)」が開発されました。
Smart ADC、光照射をすることでがん細胞を破壊するとともに薬剤を放出する新技術
名古屋大学は2022年8月23日、がんの不均一性を克服しうる新技術として、がん局所に抗体薬剤複合体を集積させ、光でがんを破壊すると同時に抗がん薬を周囲に放出する光応答性「スマート武装抗体(Smart ADC)」を開発し、その新しい効果を光バイスタンダー効果と名付けたことを発表しました。
同大学大学院医学系研究科・病態内科学講座呼吸器内科の高橋一臣元大学院生、佐藤和秀特任講師、同大学未来社会想像機構ナノライフシステム研究所・量子科学技術研究開発機構量子生命科学研究所の馬場嘉信教授、湯川博特任教授、米国国立衛生研究所・国立がん研究所の小林久隆主席研究員との共同研究によるものです。
近年開発が進む分子標的薬や抗体薬物複合体、抗体光吸収体付加物は、がんの抗原に結合することで選択的な治療効果を発揮します。しかし、固形がんでは、特異的な抗原が不均一なため、効果が限定されてしまうという課題があります。
研究グループは、トラスツズマブ エムタンシン(製品名:カドサイラ)に光吸収体IR700を結合させた薬剤をがん部位に集積させ、光照射をすることでがん細胞を破壊するとともに薬剤を放出する新技術「スマート武装抗体 (Smart ADC)」の開発に成功しました。
Smart ADCは、がん部位での光照射により、近赤外光線免疫療法の効果でがん標的特異抗原を発現しているがん細胞を光で破砕し、同時に抗がん剤を光放出することにより、抗体が付きづらい(がん抗原の発現の低い、無い)がん細胞を抗がん剤で細胞死誘導する2段構えの新しい概念の治療技術です。この治療概念を用いれば、固形がん腫瘍の不均一性の一つである抗原不均一発現による治療抵抗性を克服できることが期待されます。