慢性骨髄性白血病患者さんに対する、新型コロナウイルスワクチン2回接種の効果を検証した研究結果を発表

2022/09/28

文:がん+編集部

 慢性骨髄性白血病患者さんに対する、新型コロナウイルスワクチン2回接種の効果を検証した研究結果が発表されました。チロシンキナーゼ阻害薬の投与下でも、ワクチン接種に同等の効果が期待できます。

ワクチン接種はチロシンキナーゼ阻害薬投与下でも同等の効果が期待

 東京医科大学は2022年9月7日、同大学病院の外来通院患者さんを対象とした前向き観察研究を実施。慢性骨髄性白血病患者さんに対するチロシンキナーゼ阻害薬が、新型コロナウイルスワクチン接種後の新型コロナウイルススパイクタンパク抗体獲得に与える影響を解析した研究結果を発表しました。同大学血液内科学分野の後藤明彦主任教授、片桐誠一朗助教を中心とする研究グループによるものです。

 新型コロナウイルス感染症が世界的に流行している現在、発症および重症化予防のために新型コロナウイルスワクチンが広く普及してきています。しかし、血液がん患者さんでは疾患による影響や、抗腫瘍薬、免疫抑制薬の使用により、ワクチンの効果が低い可能性が懸念されています。

 研究グループは、同院に通院中の慢性骨髄性白血病患者さんのうち、チロシンキナーゼ阻害薬投与中または投与中止のグループと健常人の3つのグループを対象に、ファイザー製の新型コロナウイルスワクチン「BNT16b2」の接種前、2回目接種後1~5週間後、約半年後において、新型コロナウイルススパイクタンパク抗体量を測定しました。

 2回目接種後1~5週間後の解析の結果、3グループのいずれでも、新型コロナウイルススパイクタンパク抗体価の上昇がみられ、有意な差は認められませんでした。また、チロシンキナーゼ阻害薬の種類による有意差も認められませんでした。

 半年後の解析では、全ての対象者で2回目接種後1~5週間毎比較して、有意に新型コロナウイルススパイクタンパク抗体価が低下していましたが、3グループ間での有意差は認められませんでした。

 研究グループは今後の研究展開および波及効果として、次のように述べています。

 「本研究ではチロシンキナーゼ阻害薬投与の有無、種類に関わらず慢性骨髄性白血病患者さんでは2回の BNT162b2ワクチン接種による新型コロナウイルススパイクタンパク抗体獲得および維持は健常者と同等の効果が得られていたことが示され、チロシンキナーゼ阻害薬治療中の慢性骨髄性白血病患者さんに対しても複数回の新型コロナウイルスワクチン接種が健常者と同等に有効であることが示唆されました。この結果は、コロナ禍における慢性骨髄性白血病患者さんの治療継続に大きく役立つと予想されます」