がん患者さんが知りたい予後情報に関する意向調査結果を発表

2022/11/17

文:がん+編集部

 がん患者さんが、機能予後「いつまで動けるか」を知ることに関する意向や関連する要因の調査結果が発表されました。その結果、生命予後より機能予後を知りたいと考えていることが分かりました。

がん患者さんが知りたいのは残された時間より「いつまで動けるか」

 筑波大学は2022年10月28日、がん患者さんが、機能予後を知ることに関する意向や関連する要因を世界で初めて調査した結果を発表しました。同大学医学医療系の濵野淳講師らの研究グループによるものです。

 国内のがん患者さん132人(男性67人、女性65人)を対象に、2022年2⽉に無記名のインターネット調査を実施。43人が消化器がん、23人が泌尿器がん、20人が婦人科がんでした。本調査では、がん患者さんが、知っておきたいと考えている予後情報や関連する要因などが調査されました。

 主な質問項目は、以下の通りです。

  • 私は、「いつまで⽣きられるか」を知っておきたい(⽣命予後)
  • 私は、「いつまで⾃由に動けるか(旅⾏など)」を知っておきたい(運動予後)
  • 私は、「いつまで本を読むなど複雑な思考ができるか」を知っておきたい(思考予後)
  • 私は、「いつまでおいしく⾷事ができるか」を知っておきたい(⾷事予後)
  • 私は、「いつまでちゃんと会話ができるか」を知っておきたい(会話予後)

 上記の質問に対して、それぞれ「とてもそう思う」〜「全くそう思わない」の6段階で回答。調査の結果、「⽣命予後」に対して、「とてもそう思う・そう思う」と回答したのは26.6%でした。

 機能予後に対する回答は、それぞれ以下の通りでした。

  • 「運動予後」に対して、「とてもそう思う・そう思う」と回答したのは42.4%
  • 「思考予後」に対して、「とてもそう思う・そう思う」と回答したのは35.6%
  • 「⾷事予後」に対して、「とてもそう思う・そう思う」と回答したのは43.1%
  • 「会話予後」に対して、「とてもそう思う・そう思う」と回答したのは46.9%

 また、⾝近な⼈をがんで亡くした経験があることが、⽣命予後、運動予後、会話予後を知っておきたいことと関連することが分かりました。

 これらのことから、がん患者さんは、いつまで⽇常⽣活や仕事ができるかを考えるために、⽣命予後よりも機能予後を知りたいと考え、⾝近にがんで亡くなった⽅がいる場合、より予後情報を知りたいと考えている可能性が示されました。

 研究グループは今後の展開として、次のように述べています。

 「本研究は、⽣命予後以外に、がん患者が知っておきたいと考えている予後情報について分析した初めての調査です。本研究結果が、がん患者の⽣命予後だけでなく、機能予後を予測する⽅法や、本⼈の知りたい程度に合わせた伝え⽅を検討することに活⽤されていくことが期待されます」