「カピバセルチブ+フルベラント」、HR陽性進行乳がんを対象のCAPItello-291試験で無増悪生存期間を有意に延長

2022/11/29

文:がん+編集部

 ホルモン受容体(HR)陽性の進行乳がん患者さんを対象に、「カピバセルチブ+フェソロデックス」併用療法とフェソロデックス(製品名:フルベラント)を比較したCAPItello-291試験の結果が発表されました。「カピバセルチブ+フェソロデックス」併用療法は、フェソロデックスと比較して、無増悪生存期間の有意な延長が認められました。

カピバセルチブ、PI3K/AKT経路のAKTを阻害する分子標的薬

 アストラゼネカは2022年10月26日、カピバセルチブに関するCAPItello-291試験の良好な結果を発表しました。

 CAPItello-291試験は、手術不能な局所進行性または転移性HR陽性、HER2低値または陰性の乳がん患者さん708人を対象に、「カピバセルチブ+フェソロデックス」併用療法と「プラセボ+フェソロデックス」を比較した第3相試験です。主要評価項目は全患者さんに対する無増悪生存期間、PIK3CA / AKT1 / PTEN遺伝子変異があるサブグループに対する無増悪生存期間、重要な副次的評価項目は全患者さんに対する全生存期間、PIK3CA / AKT1 / PTEN遺伝子変異があるサブグループに対する全生存期間などでした。

 解析の結果、「カピバセルチブ+フェソロデックス」併用療法は、フェソロデックスと比較して、統計学的に有意かつ臨床的に意義のある無増悪生存期間の延長が認められました。解析時点での全生存期間の中央値は未達で、引き続き重要な副次的評価項目として評価されます。安全性に関しては、これまでに報告された安全性プロファイルと一貫していました。

 カピバセルチブは、「PI3K/AKT経路」の「AKT」を阻害する分子標的薬です。PI3K/AKT経路は、生存増殖シグナルの伝達経路の1つです。正常細胞では、細胞の増殖や細胞死(アポトーシス)が調整されていますが、がん細胞ではこの調整機能に異常が起きており、異常な増殖やアポトーシスが起こらなくなっています。細胞が増殖因子の刺激を受けるとPI3Kという酵素が活性化され、さらにAKTという酵素を活性化します。活性化されたAKTは、細胞内のシグナル伝達に関わるたんぱく質を調整することで、細胞の増殖やアポトーシスを調整しています。カピバセルチブは、このAKTを阻害することで、シグナル伝達を抑制し、抗腫瘍効果を発揮します。

 ロンドンがん研究所およびRoyal Marsden NHS Foundation Trustの分子腫瘍学教授で、第3相CAPItello-291試験の治験責任医師であるNicholas Turner氏は、次のように述べています。

 「第3相CAPItello-291試験において、カピバセルチブは、HR陽性乳がん患者さんにおいて臨床的に意義のある無増悪生存期間の延長を示しました。この新薬候補によって、患者さんとそのご家族にとって重要な、がんのより長期間の制御が期待できます」