予後不良な局所進行肺がんに対する新たな治療法、医師主導治験により有効性を確認

2022/12/21

文:がん+編集部

 予後不良な局所進行肺がんに対する、新たな治療法の有効性が医師主導治験により確認されました。新たな治療法は、免疫チェックポイント阻害薬「デュルバルマブ(製品名:イミフィンジ)」と術前化学放射線治療を併用し、その後に手術を行うというものです。

「イミフィンジ+術前化学放射線治療」後の手術、がんの面積が10分の1以下に縮小した割合は63%

 近畿大学は2022年12月8日、切除可能肺がんの中でも特に予後不良である「局所進行肺がん」の新規治療法の有効性を検討する第2相臨床試験を行い、その有効性を世界で初めて確認したことを発表しました。同大学医学部外科学教室(呼吸器外科部門)の光冨徹哉特任教授、宗淳一臨床教授、濵田顕助教らを中心とした研究グループによるものです。

 遠隔転移がなく肺の近くにある臓器やリンパ節に浸潤や転移をきたしている局所進行肺がんは、ステージ3にあたります。5年生存割合は3Aで36%、3Bで26%と、非常に予後不良とされています。これまで、局所進行肺がん患者さんの多くは、外科切除のみでは高確率でがんが再発するために、化学療法、または化学放射線治療の併用療法後の外科切除、あるいは化学放射線併用治療が治療の中心となってきました。近年、免疫チェックポイント阻害薬と術前化学放射線治療の併用後の手術の有効性が報告されていました。

 研究グループは、局所進行肺がん患者さんに対する、デュルバルマブと術前化学放射線療法の併用療法後の外科切除の有効性を検討するため、医師主導治験となる第2相臨床試験を実施。その結果、がんの面積が10分の1以下に縮小した患者の割合は63%でした。また、外科切除で完全切除できた患者に限ると、その割合は76%となり、非常に良好な成績を示しました。

 本研究グループ代表の光冨徹哉特任教授は、次のように述べています。

 「手術が可能である局所進行肺がんに対しては化学療法の後、あるいは化学放射線療法の併用療法後に手術を行う治療が行われてきましたが、その成績は決して満足すべきものではありませんでした。最近、免疫チェックポイント阻害薬と化学療法を術前に使う治療の優れた成績が報告され、新しい標準治療になろうとしています。しかし、それでも局所のがんの制御は十分でないために、本試験を計画しました。すなわち放射線療法、化学療法、免疫療法の後に手術を行うことで最高の効果をねらったものです。今回の結果はその期待に十分応えるもので、次世代の標準治療となる期待がさらに膨らんだと言えます」