3cm以下の早期肺がんに対して肺機能温存手術である区域切除の有用性を証明
2023/04/18
文:がん+編集部
3cm以下の早期肺がんに対して、肺機能温存手術である区域切除の有用性を証明する論文が、「The Lancet Respiratory Medicine」で発表されました。3cm以下の早期肺がんに対して、これまで標準治療として行っていた肺葉切除に加えて、切除範囲がより小さい区域切除が標準治療のひとつとして確立し、より肺機能温存に配慮した外科治療の提供が可能となります。
術後5年時点における無再発生存割合は98%
国立がん研究センターは2023年3月27日、3cm以下のすりガラス影を主とする肺がん患者さん396人を対象に、区域切除の有用性を検証する単群検証的試験「JCOG1211」の結果が「The Lancet Respiratory Medicine」に掲載されたことを発表しました。試験の実施は、日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)の肺がん外科グループ(研究代表者:順天堂大学大学院医学研究科呼吸器外科学 鈴木健司氏、共同研究者:国立がん研究センター東病院呼吸器外科 青景圭樹氏、聖マリアンナ医科大学呼吸器外科 佐治久氏)によるものです。
JCOGの肺がん外科グループは、全国43施設の協力を得て、胸部CT所見においてすりガラス影を主とする3cm以下のステージ1肺がんで、全身状態が良好で肺葉切除に耐え得るなどの基準を満たす20~79歳の患者さん396人を対象に、区域切除の有用性を検証する単群検証的試験を実施しました。
全患者登録終了後、5年後に主たる解析を行った結果、区域切除が完遂された357人の患者さんの術後5年時点における無再発生存割合は98%で、上回るべき最低値として予め設定していた87%を有意に上回ったため、区域切除が同対象においても有効であると結論づけられました。
また、区域切除後の術後早期に発症する主な有害事象のうち、グレード3~4の有害事象は、肺感染(1%)、肺瘻(1%)、胸水(
以上の結果から、区域切除の有効性と安全性が証明され、同対象においては肺葉切除に加えて区域切除が標準治療のひとつと位置付けられました。
研究グループは展望として、次のように述べています。
「本試験の結果を受け、エビデンスに基づいた外科治療の提供が可能となり、3cm以下ですりガラス影を主とする肺がんに対しては、切除マージン(がんからの適切な距離)が確保できれば、区域切除を行うことが第一選択として推奨されます。本試験の結果により、日本だけでなく世界的にも標準治療の肺葉切除に加えて区域切除が行われる機会が増え、肺がん患者さんにより有用な手術が適用されることが期待されます。また、JCOG肺がん外科グループではさらに肺がんの病態解明に努め、根治性が高く、機能温存の面からも優れた治療開発を進めてまいります」