3D細胞培養技術「invivoid」を用いた抗がん剤効果の予測、臨床研究をがん研、凸版、大阪大が開始
2023/05/25
文:がん+編集部
3D細胞培養技術「invivoid」を用いた、個々の患者さんに対する抗がん剤の効果を予測する手法の確立に向けた臨床研究を、がん研究会、凸版印刷、大阪大学が開始しました。
Invivoid、がんモデルやミニ臓器などが製作可能なバイオマテリアルによる3D細胞培養技術
がん研究会は2023年5月11日、凸版印刷と大阪大学の三者の共同研究グループが、3D細胞培養技術であるinvivoidを用いて患者さんのがん細胞を体外で培養し、複数の抗がん剤を暴露して得られた効果と、実際に患者さんに同じ抗がん剤を投与して得られた効果との比較を行う臨床研究を開始したことを発表しました。
Invivoidは、大阪大学大学院工学研究科の松崎典弥教授と凸版印刷で共同開発した独自バイオマテリアルによる3D細胞培養技術で、がんモデルの他に、肝モデル、皮膚モデル、ミニ乳房モデル、そして、培養肉モデルなどのミニ臓器を製作することが可能です。
2019年に凸版印刷が、がん研究会の化学療法センター内に共同ラボを設置。患者さんから研究用として利活用に同意をいただいた検体(手術により摘出された腫瘍の残余検体)から樹立した、患者由来がん細胞を移植したマウスとinvivoidで製作したがん細胞との比較検証を実施してきました。その結果、マウスとinvivoidとの一致率は87.9%と従来技術よりも良好な結果を確認でき、抗がん剤評価において、invivoidがマウスを代替できる可能性が示唆されました。
この結果を受け、がん研究会と凸版印刷と大阪大学の三者でinvivoidによるがん個別化医療を目指し、ヒトに対する抗がん剤の効果をinvivoidが予測できるかの臨床研究が開始されました。
それぞれの役割は、以下の通りです。
- ・がん研: 大腸がん患者さんを対象とした薬剤感受性を検討する臨床研究の計画策定および実施
- ・大阪大学: 組織工学的観点からがん患者組織の培養におけるinvivoidの改良改善
- ・凸版印刷: invivoidを用いた大腸がん患者さんのがん微小環境を模倣した立体組織の製作
同研究会は今後の目標として、次のように述べています。
「がん研と凸版印刷と大阪大学は、invivoidを用いた抗がん剤の効果判断の臨床研究を2023年9月までに開始することを目指します。また本臨床研究を通じて、がん個別化医療実現に向けて2025年の先進医療適用を目指します」