がんの新薬に対するバイオマーカーを発見するAI技術を用いた実証実験を開始
2023/06/02
文:がん+編集部
AI技術を用いてがんの新薬に対するバイオマーカーを発見する実証実験が開始されました。新薬開発における臨床試験の成功確率向上や期間短縮につながる研究です。
がんの新薬開発における臨床試験の成功確率向上や期間短縮につながる実証実験
京都大学、Chordia Therapeutics株式会社、富士通株式会社は2023年5月17日、がんの新薬開発における臨床試験の成功確率向上や期間短縮につながるバイオマーカーを発見するための実証実験を開始することを発表しました。
がんの予防や診断、治療の選択を目的にさまざまなバイオマーカーが有効活用されています。創薬における臨床試験では、バイオマーカーを用いて特定のサブグループに焦点を当てることで、医薬品開発の成功率が向上すると考えられています。
京都大学とChordia社は2018年5月よりRNA制御ストレスを標的とする新たながん治療薬の開発を進めていましたが、今回、富士通が新たに加わり3社による実証実験が開始されます。
本実証実験では、京都大学が確立した次世代シーケンサーによるゲノム情報の解析プラットフォームから得た結果に対し、富士通が先AI技術を素早く試せる「Fujitsu Kozuchi (code name) – Fujitsu AI Platform」上で公開した因果発見技術を用いて、ヒト全2万遺伝子と薬剤効果との因果構造およびその構造が生じる条件との網羅的探索を実施することにより、Chordia社が研究開発を進めるRNA制御ストレスを標的とするがん治療薬の効果を予測するバイオマーカーの発見を目的としたものです。
京都大学医学研究科の小川誠司教授は、次のように述べています。
「私共はがんの性状解析、そして新しい医薬品創出への手がかりを発掘するために、次世代シーケンサーを用いたがんゲノム情報の解析プラットフォームをこれまでに築き上げてきました。この私共のプラットフォームと協調する形で、今回、富士通が新たに構築された因果発見技術とFujitsu Kozuchi (code name) – Fujitsu AI Platformを組み合わせることで、これまでにない次世代のがんゲノム解析技術の創出を目指します」
Chordia社CSO の森下大輔氏は、次のように述べています。
「新薬開発においては、これまでにない医薬品そのものの創出に加え、その医薬品開発を支えるバイオマーカーの同定とその活用が、臨床試験における成功の可否に多大な影響を与えるため重要な位置づけを担っています。今回富士通、そして京都大学との実証実験を通じて、弊社が開発中の新薬についてのバイオマーカーの探索研究に取り組んで参ります」
富士通執行役員EVP富士通研究所長の岡本青史氏は、次のように述べています。
「当社は、先端AI技術を素早く試せる新たなAIプラットフォームFujitsu Kozuchi(小槌:コヅチ) (code name) – FujitsuAI Platformを2023年4月20日からグローバルに公開しました。今回の実証実験は、AIプラットフォームにより利用可能になる因果発見技術を用いた共創活動の事例として社会に大きなインパクトを与えることを期待します」