sacituzumab govitecan-hziy、HR+/HER2-転移性乳がんの治療薬としてCHMPが肯定的見解
2023/08/03
文:がん+編集部
治療歴のあるHR陽性HER2陰性の転移性乳がんに対する治療薬として、欧州医薬品庁の欧州医薬品委員会(CHMP)がsacituzumab govitecan-hziyに対する肯定的な見解を示しました。
sacituzumab govitecan-hziy、化学療法と比較して死亡リスクを21%低下
ギリアド サイエンシズ社は2023年6月23日、治療歴のあるHR陽性HER2陰性の転移性乳がんに対する治療薬としてのsacituzumab govitecan-hziyについて、CHMPが肯定的な見解を示したことを発表しました。今回の肯定的見解は、TROPiCS-02試験の結果に基づくものです。
TROPiCS-02試験は、内分泌療法とCDK4/6阻害薬および転移性疾患に対して2~4つの化学療法による治療歴のあるHR+/HER2-転移性乳がん患者さん543人を対象に、sacituzumab govitecan-hziyと医師が選択した化学療法(エリブリン、カペシタビン、ゲムシタビン、ビノレルビン)を比較した第3相試験です。主要評価項目は無増悪生存期間、副次評価項目は全生存期間、全奏効率、 クリニカルベネフィット率、奏効期間、安全性、忍容性、生活の質などでした。
解析の結果、sacituzumab govitecan-hziyは化学療法と比較して死亡リスクを21%低減し、全生存期間の中央値は、それぞれ14.5か月と11.2か月でした。また、無増悪生存期間の解析においても、疾患進行および死亡のリスクを34%低減。無増悪生存期間の中央値は、sacituzumab govitecan-hziyが5.5か月、化学療法4.0か月でした。1年の無増悪生存期間を示した患者さんの割合は、化学療法の3倍となりました(sacituzumab govitecan-hziy:21%、化学療法:7%)。
安全性に関しては、これまでに認められている安全性プロファイルと一貫しており、新たな安全性シグナルは確認されませんでした。TROPiCS-02試験において、1%以上の頻度で認められた副作用は、下痢(5%)、発熱性好中球減少症(4%)、好中球減少症(3%)のほか、腹痛、大腸炎、好中球減少性大腸炎、肺炎、嘔吐がそれぞれ2%で、sacituzumab govitecan-hziyを投与された患者さんにおいて間質性肺炎は認められませんでした。また、副作用による中止率は、sacituzumab govitecan-hziy6%、化学療法4%でした。
sacituzumab govitecan-hziyは、トポイソメラーゼI阻害薬である「SN38」とTrop-2抗体を結合させた抗体薬物複合体です。Trop-2は、乳がんや膀胱がんの90%以上を含む複数のがん種で高発現する細胞表面抗原です。sacituzumab govitecan-hziyは、Trop-2抗原と結合することで、SN38を直接がん細胞のみに作用させ抗腫瘍効果を発揮すると考えられています。
スペイン・マドリードおよびバルセロナの国際乳がんセンターセンター長のハビエル・コルテス医師は、次のように述べています。
「今回のCHMPの肯定的な見解は、治療歴のあるHR+/HER2-転移性乳がんに対するsacituzumab govitecan-hziyの臨床的ベネフィットおよび価値を確認するもので、欧州において、この治療選択を患者さんに届ける前向きな一歩です。がん進行後、治療選択肢がない治療歴のあるHR+/HER2-転移性乳がん患者さんは非常に多く、今回の肯定的な見解は、欧州全域の患者さんや周りの大切な方々にとって、大きな前進です」