がん経験者の生活の質の向上などに「笑い」が効果的である可能性
2023/08/31
文:がん+編集部
近畿大学と吉本興業が「笑い」の効果を医学的に検証。がん経験者の生活の質の向上などに「笑い」が効果的である可能性が示されました。
お笑いのDVDを毎日15分以上4週間鑑賞し、採血による酸化ストレス測定とアンケートによる心理検査を実施
近畿大学は2023年8月3日、同大学と吉本興業ホールディングス株式会社が共同で「笑い」の効果を医学的に検証した第2弾の研究論文が、多分野の国際的な医学雑誌Cureus(キュリアス)にオンライン掲載されたことを発表しました。今回の研究は、同大学医学部臨床医学部門研究室の阪本亮講師、同内科学教室の小山敦子教授を中心とする研究グループによるものです。
がん経験者は疼痛や疲労、神経障害、再発の恐怖などさまざまなストレスに脅かされていることが多く、日常生活の機能が衰えることにより、健康関連の生活の質が低下しています。研究グループは、こうした課題をかかえるがん経験者に対して、「笑い」がよい影響を与えるのではと考え研究を実施し、第1弾として、2017年に笑いが「緊張・不安」「怒り・敵意」「疲労」のスコアを改善することを報告しました。
第2弾の研究として、がん経験者がお笑いを鑑賞し続けることで、健康関連の生活の質、精神状態や酸化ストレス、抗酸化力などへどのような影響を与えるかについて、がん経験者50人を対象に、自宅などでお笑いのDVDを毎日15分以上4週間鑑賞し、採血による酸化ストレス測定とアンケートによる心理検査を実施しました。
その結果、毎日のお笑い鑑賞に、がん経験者の生活の質と抗酸化能力、不安、うつを改善する効果がある可能性が示唆されました。
研究グループは、次のように述べています。
「安全かつ利便性が高く、低コストである点を考慮すると、がん経験者にとって笑いは価値の高い手段であると考えられ、調査で得られたデータをもとに、笑いへの反応や効果予測などを検証し、将来的にはがん経験者の生活の質向上の手法を確立させるなど、新しい価値の提供につなげたいと考えています」