ジャカビ、「造血幹細胞移植後の移植片対宿主病(ステロイド剤の投与で効果不十分な場合)」の効能・効果について国内承認
2023/09/12
文:がん+編集部
JAK阻害薬ルキソリチニブ(製品名:ジャカビ)が、「造血幹細胞移植後の移植片対宿主病(ステロイド剤の投与で効果不十分な場合)」の効能・効果について国内承認されました。
ジャカビ、ステロイドに抵抗性を来した移植片対宿主病を対象とした2つの国際共同第3相試験で有効性と安全性を示す
ノバルティス ファーマは2023年8月23日、ルキソリチニブが「造血幹細胞移植後の移植片対宿主病(ステロイド剤の投与で効果不十分な場合)」の効能または効果の追加承認を取得したことを発表しました。今回の承認は、C2301試験/REACH2試験とD2301試験/REACH3試験の結果に基づくものです。
移植片対宿主病は、同種造血幹細胞移植で多く認められる移植合併症で、移植を受けた患者さんの正常な組織をドナー(移植片)由来の免疫細胞が異物とみなし、攻撃することにより引き起こされます。移植片対宿主病の現在の標準治療は、副腎皮質ステロイドの全身投与ですが、およそ半数の患者さんがステロイド抵抗性を来し、そのような患者さんでは二次治療が必要となります。二次治療は、さまざまな免疫抑制剤、細胞療法、医療機器により行われていますが、いずれの治療法も前向き比較試験によって有用性が示されておらず、国内では保険償還されている薬剤も限られています。
ルキソリチニブは、JAKと呼ばれる酵素を阻害する働きを持ち、JAK1およびJAK2に高い選択性を有しています。JAKの働きを阻害してシグナル伝達を阻害することにより、ドナー由来の免疫細胞の活性化を抑制し、急性および慢性移植片対宿主病の症状や長期予後を改善することが期待されます。
C2301試験/REACH2試験は、日本人30人を含む計309人の急性移植片対宿主病患者さんを対象に、ルキソリチニブの有効性と安全性を評価した第3相試験です。有効性の評価が可能だった患者さん154人のうち主要評価項目である投与28日時の奏効率は62.3%で、医師選択による最良の治療を受けた患者さん155人の奏効率39.4%と比べて、統計学的に有意に高い結果が得られました。副作用発現頻度は66.4%で、主な副作用は、血小板減少症23.0%、貧血16.4%、血小板数減少14.5%でした。
D2301試験/REACH3試験は、日本人37人を含む計329人の慢性移植片対宿主病患者さんを対象に、ルキソリチニブの有効性と安全性を評価した第3相試験です。中間解析では、ルキソリチニブによる治療を受けた患者さん97人と、医師選択による最良の治療を受けた患者さん99人が評価されました。
主要評価項目である投与24週時の奏効率はルキソリチニブ50.5%、医師選択による最良の治療26.3%で、医師選択による最良の治療と比較してルキソリチニブで有意に高い結果が得られました。最終解析では、有効性の評価が可能であった患者さん165人のうち、主要評価項目である投与24週時の奏効率は49.7%で、医師選択による最良の治療を受けた患者さん164人の奏効率25.6%よりも有意に高い結果が得られました。副作用発現頻度は67.9%で、主な内容は貧血23.6%、好中球減少症10.9%、ALT増加10.3%でした。
同社は、次のように述べています。
「同種造血幹細胞移植は、さまざまな血液腫瘍や非悪性血液疾患の根治的治療として増加傾向にあります。同時に、同種造血幹細胞移植の合併症に対する治療へのニーズも高まっています。移植片対宿主病の患者さんの中には、ステロイドによる治療で十分な効果が得られない方も多く、そうした患者さん、そしてご家族の負担は測りしれません。ジャカビは、移植片対宿主病に対する新たな作用機序を有する治療選択肢として、急性および慢性の移植片対宿主病いずれに対してもベネフィットをもたらす可能性があります。ジャカビの効能追加が、患者さんだけでなく、ご家族や治療に臨まれる医療従事者の方々の負担軽減と希望につながることを期待しています」