ビタミンDサプリ、p53の過剰発現かつ抗体を持つ消化管がん患者さんの再発死亡リスクを減少
2023/09/25
文:がん+編集部
p53がん抑制タンパク質の異常発現に免疫反応が見られる消化管がん患者さんにおいて、ビタミンDサプリメントの連日内服によって再発・死亡リスクが73%減少していたことが、事後解析により明らかになりました。
再発リスクの高いp53過剰発現患者さんに対する有効性、第2弾となる試験を開始
東京慈恵会医科大学は2023年8月28日、ビタミンDサプリメントを連日内服した場合、p53が過剰発現し抗p53抗体を持つ消化管がん患者さんの再発または死亡リスクがプラセボに比べて73%減少したことをランダム化比較試験の事後解析により明らかにしたと発表しました。同大学分子疫学研究部浦島充佳教授らの研究グループによるものです。
がん抑制遺伝子のp53は、がんの中で最も変異頻度が多く、その変異によるがんは再発率が高いことがよく知られています。またp53にタンパク質の構造異常を伴うような変異があるとp53がん抑制タンパク質が過剰発現することも判っています。
研究グループは、p53変異陽性のがん患者さんのp53の発現の程度を「過剰発現」「中等度発現」「わずかな発現」「無発現」の4つのグループに分けて解析。この4グループで比較するとp53が多く発現したグループほど再発死亡率が高くなる傾向にありました。
また、p53がん抑制タンパク質が発現している場合の免疫反応について調べたところ、血中の抗p53タンパク質抗体の濃度が顕著に上昇していました。これらのことから、変異したp53遺伝子から作られるp53がん抑制タンパク質を免疫細胞が異物として認識していることが示されました。
さらに、p53の過剰発現のグループのうち、血中から抗p53抗体が検知できた患者グループについて再発死亡リスクを比較したところ、他のグループより約3.5倍高いことが明らかになりました。この患者さんのグループに注目して、ビタミンDサプリメントの連日服用の効果をプラセボと比較したところ、ビタミンDを服用した患者さんでは、がんの再発死亡リスクが73%低くなっていることが判明。ビタミンDサプリメントが抗腫瘍免疫を活性化して患者さんの予後を改善している可能性を示唆するものです。一方、それ以外の場合ではビタミンDサプリメントとプラセボで再発死亡リスクに差がなかったため、ビタミンDサプリメントは特にがんが再発しやすい患者さんに有効であることが判りました。
浦島充佳教授は、次のように述べています。
「過去ビタミンDサプリメントのがん再発予防の研究を継続してまいりました。もしも、ビタミンDサプリメントががんの再発を抑制するとしたら、そのメカニズムは何なのか?ということが常に念頭にありました。今回の研究結果よりp53がん抑制遺伝子変異→p53がん異常タンパク発現→抗腫瘍免疫が反応→ビタミンDが抗腫瘍免疫を増強する→再発リスクを抑制といった構図が浮かび上がりました。p53がん抑制遺伝子変異があると再発リスクが高く、逆にこのようなリスクの高い患者さんにビタミンDが有効であるとしたら朗報です。しかも73%も抑制したという他の研究でも類をみない極めて高い効果です。ボストン大学医学部のホリック教授からは、この結果はゲームチェンジャーになり得ると高い評価をいただきました。しかし、これは事後解析の結果なので、本当かどうかを確認する必要があります。p53が過剰発現している場合で本当にビタミンDサプリメント投与が効くのか?を明らかにするべく2022年1月より第2弾となるアマテラス2試験を開始しています」