HER2陽性の進行胃がんを対象に「キイトルーダ+ハーセプチン+化学療法」を評価した臨床試験の結果を発表
2024/01/11
文:がん+編集部
HER2陽性の進行胃腺がんまたは食道胃接合部がんを対象に「ペムブロリズマブ(製品名:キイトルーダ)+トラスツズマブ(製品名:ハーセプチン)+化学療法」を評価したKEYNOTE-811試験の結果を発表。無増悪生存期間の改善が認められました。
「キイトルーダ+ハーセプチン+化学療法」、「プラセボ+ハーセプチン+化学療法」と比較して病勢進行または死亡のリスクを27%低下
米メルク社は2023年10月20日、KEYNOTE-811試験の結果を発表しました。
KEYNOTE-811試験は、HER2陽性の治癒切除不能な進行・再発の胃腺がんまたは食道胃接合部腺がん患者さん698人を対象に、一次治療として「ペムブロリズマブ+トラスツズマブ+化学療法」併用療法と「プラセボ+トラスツズマブ+化学療法」併用療法を比較した第3相試験です。主要評価項目は無増悪生存期間、全生存期間、副次評価項目は客観的奏効率、奏効期間、安全性などでした。
28.4か月間(中央値)の追跡調査後、「ペムブロリズマブ+トラスツズマブ+化学療法」併用療法は「プラセボ+トラスツズマブ+化学療法」併用療法と比較して無増悪生存期間の統計学的に有意な改善を示し、3回目の中間解析(追跡期間中央値38.5か月)で病勢進行または死亡のリスクを27%低下させました。また、PD-L1陽性の患者さんでは、病勢進行または死亡のリスクを29%低下させました。「ペムブロリズマブ+トラスツズマブ+化学療法」併用療法の客観的奏効率は73%、奏効期間の中央値は11.3か月でした。
安全性に関しては、これまでに報告されている安全性プロファイルと一貫していました。治療関連の有害事象の発現頻度は、「ペムブロリズマブ+トラスツズマブ+化学療法」併用療法で99%、「プラセボ+トラスツズマブ+化学療法」併用療法群で100%でした。グレード3~4の有害事象の発現頻度はそれぞれ58%と50%、グレード5の有害事象の発現頻度はどちらも1.0%、有害事象によりいずれかの治験薬を中止した患者さんの割合は、それぞれ36%と33%でした。
全グレードの免疫関連有害事象および急性輸液反応の発現頻度は、「ペムブロリズマブ+トラスツズマブ+化学療法」併用療法で39%、「プラセボ+トラスツズマブ+化学療法」併用療法群で24%でした。グレード3~4の免疫関連有害事象および急性輸液反応の発現頻度はそれぞれ10%と3%、グレード5の免疫関連有害事象および急性輸液反応の発現頻度はどちらも1.0%でした。高頻度(10%以上)に認められた事象は急性輸液反応(16.6%)、甲状腺機能低下症(10.3%)でした。免疫関連有害事象および急性輸液反応によりいずれかの治験薬を中止した患者さんの割合は、それぞれ7%と4%でした。
メモリアル・スローンケタリングがんセンター消化器腫瘍科の主任担当医であり、KEYNOTE-811試験のグローバル首席治験責任医師であるエレーナ・Y・ジャンジギアン博士は、次のように述べています。
「胃食道がんの患者さんの大部分は診断された時点で進行しており、これまでは、治療の経過が良くない場合が多くありました。KEYNOTE-811試験の結果は、キイトルーダとトラスツズマブおよび化学療法との併用療法の臨床上のベネフィットをさらに示すものであり、PD-L1陽性(CPS≧1)のHER2陽性進行がんの患者さんにおいて、病勢進行または死亡のリスクを低下させました」