【セミナー】前立腺がん、低侵襲治療の3次元的診断とがん局所療法がもたらす機能温存によるQOL向上の可能性とは?

2018/02/08

取材・文 がん+編集部

2020年男性の部位別罹患数1位になる前立腺がん

GGN病変
東海大学医学部付属八王子病院泌尿器科 准教授
小路直先生

 東海大学医学部付属八王子病院が、1月31日に前立腺がん治療の最前線をテーマにしたプレスセミナー「60歳以上の男性の2人に1人が罹患、前立腺がん診断・治療の最前線~がんのみを治療、機能温存によるQOLの向上を目指す~」を開催。同病院の泌尿器科准教授である小路直先生が、「前立腺内部の3次元的がん局在診断とがん局所療法(フォーカル・セラピー)」と題した講演を行いました。

 国立がん研究センターがん対策情報センターのがん統計によると2017年の男性の部位別罹患数予測では大腸がんを抜き、胃がん、肺がんに次ぎ3位となるほど年々増加傾向にあり、2020年には、1位になるとの予測もあります。PSA検診が普及したことで、早期の前立腺がんが発見できるようになったことに加え、食事の欧米化や高齢化など生活習慣や社会事情の変化も罹患数増加の要因となっています。

前立腺がんのQOL向上が期待できる先進医療の画像ガイド生検とがん局所療法

 東海大八王子病院では、PSA値4以上の患者さんに対して「MRI-TRUS融合画像ガイド生検」が行われています。2016年2月に同病院で初めて先進医療Aとして承認を受け、現在までに540症例が行われています。また、この診断法を用いた新たながん局所療法(フォーカルセラピー)も臨床研究です。

 前立腺がんは、肉眼では観察できず、前立腺内にがんが多発するという特徴があるため、部分治療が不可能な唯一の臓器といわれてきました。そのため、初期治療として行われる外科手術や放射線治療では、前立腺全体に対する治療となり、排尿機能や性機能への影響が少なからずあります。がん局所療法は、前立腺内にあるがんのみを治療し正常な組織を極力温存することで、機能を温存する低侵襲の治療法です。

 この治療を可能にするためには、前立腺内のどこにどのようながんができているかを正確に知ることが必要です。その新しい技術が、同病院で先進医療として行われている「MRI-TRUS融合画像ガイド生検」です。MRIとエコーによる画像を融合処理して、がんの状態を視覚化しながら針を正確に刺すことができる生検です。この生検では、前立腺がんの検出率が向上し、がんの有無のみならず、詳細な情報が得られるようになりました。

 正常な組織を極力温存し機能を温存する従来の治療法は、フォーカルセラピーと言われ、高密度焦点式超音波療法(HIFU)や小線源療法が行われていましたが、前立腺内のどこにどうようながんができているかが正確にわかることで、部分治療の成績向上の可能性が期待できます。

 同病院では、早期前立腺がんに対するHIFUを用いたフォーカルセラピーが2016年4月から臨床研究として行われています。前立腺がん患者さんのQOL向上が望める治療法として期待されます。