トルカプ、HR陽性の進行乳がんの治療薬として国内承認
2024/04/19
文:がん+編集部
PIK3CA、AKT1、PTEN変異のあるホルモン受容体(HR)陽性の進行乳がんの治療薬として、カピバセルチブ(製品名:トルカプ)がフルベストラント(製品名:フェソロデックス)との併用療法で国内承認されました。
「トルカプ+フェソロデックス」、フェソロデックス単剤と比較して病勢進行または死亡リスクを50%低減
アストラゼネカは2024年3月27日、カピバセルチブとフルベストラントとの併用療法が、「内分泌療法後に増悪したPIK3CA、AKT1またはPTEN遺伝子変異を有するホルモン受容体陽性かつHER2陰性の手術切除不能または再発乳がん」を効能・効果として、厚生労働省からの承認を取得したことを発表しました。今回の承認は、CAPItello-291試験の結果に基づくものです。
CAPItello-291試験は、局所進行性(手術不能)または転移性HR陽性、HER2低発現または陰性の乳がん患者さん708人を対象に、「カピバセルチブ+フルベストラント」併用療法と「プラセボ+フルベストラント」(フルベストラント単剤療法)を比較した第3相試験です。主要評価項目は、全患者さんに対する無増悪生存期間、PI3K/AKT経路に変異がある患者さんに対する無増悪生存期間でした。
PI3K/AKT経路の遺伝子変異がある患者さんに対する解析の結果、「カピバセルチブ+フルベストラント」併用療法はフルベストラント単剤療法と比較して、病勢進行または死亡リスクを50%低下。無増悪生存期間の中央値は、それぞれ7.3か月と3.1か月でした。
東京都立病院機構がん・感染症センター都立駒込病院の戸井雅和院長は、次のように述べています。
「この度のトルカプとフェソロデックスの併用療法の承認によって、ホルモン受容体(HR)陽性進行乳がんの半数となるPIK3CA、AKT1またはPTENの変異を有する患者さんに待ち望まれていた新たな治療選択肢を提供できるようになり、日本におけるHR陽性進行乳がん治療が進展しました。これらの遺伝子変異の検索は、内分泌療法をベースとする治療の効果を拡大し病勢進行を遅らせるこの併用療法の恩恵を患者さんにもたらすことになり、臨床現場において極めて重要です」