EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がん、今後出現しうる薬剤耐性への克服薬候補を発見

2024/04/22

文:がん+編集部

 オシメルチニブ(製品名:タグリッソ)耐性のEGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がんに対する「ブリグチニブ(製品名:アルンブリグ)+抗EGFR抗体」併用療法の有効性が動物実験で確認されました。また、今後出現しうる薬剤耐性変異の予測とその克服薬候補が見出されました。

予測したアルンブリグ耐性(EGFR活性化変異+T790M+C797S+L718M変異体)に対し、克服できる可能性のある第4世代EGFR阻害薬を発見

 がん研究会は2024年2月26日、オシメルチニブ耐性のEGFR-T790M+C797S肺がん細胞に対し、ブリグチニブと各種抗EGFR抗体との併用療法の有効性を検証し、さらに今後生じる可能性のある新たなブリグチニブ併用療法への薬剤耐性の克服薬候補を発見したことを発表しました。同研究会がん化学療法センター基礎研究部の片山量平部長、がん研有明病院呼吸器内科の内堀健医長、東京大学大学院新領域創成科学研究科博士課程の鈴木麻衣氏(研究当時)らの研究グループによるものです。

 EGFR遺伝子変異陽性の非小細胞肺がんに対しては、EGFR阻害薬が高い抗腫瘍効果を示します。しかし、多くの場合数年以内に耐性化し、特にEGFR活性化変異にT790MとC797S変異が加わる(EGFR-T790M+C797S)と、既存のあらゆるEGFR阻害薬に耐性を示すことが課題となっています。

 研究グループは、これまでにEGFR-T790M+C797Sに対し「ブリグチニブ+抗EGFR抗体」併用療法が有効である可能性を発見していました。しかし、このブリグチニブ併用療法に対しても耐性変異が出現する可能性があります。今回、ブリグチニブと各種抗EGFR抗体との併用療法の有用性を検証するとともに、ブリグチニブ併用療法に生じる可能性のある新たな耐性変異と克服法の発見を目標に研究を開始しました。

 まず、ブリグチニブとさまざまな抗EGFR抗体との併用療法を細胞株や動物実験で検討した結果、いずれの抗EGFR抗体併用療法でも高い抗腫瘍効果を示すことが明らかになりました。次に結晶構造解析を行い、ブリグチニブがEGFR-T790M+C797S変異体にどのように結合し阻害しているか、結合に重要なアミノ酸残基はどれかを明らかにしました。さらに、ブリグチニブ耐性変異を予測し、臨床的にオシメルチニブ耐性変異としても報告されているL718およびG796変異がEGFR-T790M+C797Sに新たに加わることでブリグチニブ耐性を誘導することが判明しました。

 このEGFR活性化変異+T790M+C797S+L718M変異体は、承認されたすべてのEGFR阻害薬に対して耐性を示すことが明らかになりました。そこで研究グループは阻害剤スクリーニングを行い、これらの耐性を克服できる可能性のある第4世代のEGFR阻害剤BI-4020を見出しました。その一方で、BI-4020は抗EGFR抗体を併用することでその活性が増強され動物実験で高い抗腫瘍効果が得られました。により克服できる可能性が示されましたが、BI-4020はEGFR-L747Pや-S768Iのような低頻度で見つかる活性化変異体には阻害活性を示さないことも明らかになりました。