HR+HER2低発現の化学療法未治療・転移再発乳がん対象、エンハーツを評価したDESTINY-Breast06試験の結果発表

2024/07/08

文:がん+編集部

 ホルモン受容体(HR)陽性かつHER2低発現、化学療法未治療の転移再発乳がんを対象にトラスツズマブ デルクステカン(製品名:エンハーツ)を評価したDESTINY-Breast06試験の結果を発表。無増悪生存期間の改善が認められました。

エンハーツ、化学療法と比較して統計学的有意かつ臨床的に意義のある改善を示す

 第一三共株式会社は2024年6月3日、DESTINY-Breast06試験の結果を2024年米国臨床腫瘍学会年次総会で報告したことを発表しました。

 DESTINY-Breast06試験は、内分泌療法およびCDK4/6阻害薬または複数の内分泌療法による前治療を受けたHR陽性かつHER2低発現の化学療法未治療の転移再発乳がん患者さん866人を対象に、トラスツズマブ デルクステカンと化学療法を比較した第3相試験です。主要評価項目は無増悪生存期間、主な副次的評価項目は全生存期間、安全性などでした。

 HR陽性かつHER2低発現の化学療法未治療の転移再発乳がん患者さん713人に対する解析の結果、トラスツズマブ デルクステカンは化学療法と比較して病勢進行または死亡リスクを38%低下させました。それぞれの無増悪生存期間の中央値は、トラスツズマブ デルクステカン13.2か月、化学療法8.1か月でした。

 重要な副次評価項目である全患者(HER2低発現、HER2超低発現患者さん含む)グループ866人に対する解析では、トラスツズマブ デルクステカンは化学療法と比較して病勢進行または死亡リスクを37%低下させ、統計学的に有意かつ臨床的に意義のある改善を示しました。無増悪生存期間の中央値は、それぞれ13.2か月と8.1か月でした。

 また、HER2超低発現患者さん152人に対する事前に規定した探索的な解析において、無増悪生存期間の中央値は、トラスツズマブ デルクステカン13.2か月、化学療法8.3か月でした。

 客観的奏効率の解析では、HER2低発現患者さんではトラスツズマブ デルクステカン56.5%、化学療法32.2%でした。全患者さんに対する客観的奏効率はそれぞれ57.3%と31.2%、HER2超低発現患者さんではそれぞれ61.8%と26.3%でした。

 安全性に関しては、新たな安全性シグナルは認められませんでした。グレード3以上の有害事象は、好中球減少症(20.7%)、白血球減少症(6.9%)、貧血(5.8%)などが認められました。間質性肺疾患は11.3%がトラスツズマブ デルクステカン投与と関係があると判定され、グレード1が1.6%、グレード2が8.3%、グレード3が0.7%、グレード4が0%、グレード5(死亡)が0.7%でした。

 同社は、次のように述べています。

 「本試験結果に基づき、化学療法未治療のHR陽性かつHER2低発現(HER2超低発現を含む)乳がん患者さんに本剤を速やかに提供できるよう、日本を含めたグローバル承認申請に向けた準備を進めております」