「免疫チェックポイント阻害薬によるがん免疫療法のいまとこれから」メディアセミナーレポート

2024/08/01

文:がん+編集部

 「免疫チェックポイント阻害薬によるがん免疫療法のいまとこれから」と題したメディアセミナーが、小野薬品工業とブリストル・マイヤーズ スクイブ社によって開催されました。

オプジーボの国内承認から10年、推定19万人の患者さんに治療を提供

 小野薬品工業株式会社とブリストル・マイヤーズ スクイブ株式会社は2024年7月24日、ニボルマブ(製品名:オプジーボ)の国内承認から10年を記念して、「免疫チェックポイント阻害薬によるがん免疫療法のいまとこれから」と題したプレスセミナーを開催しました。

 まず、小野薬品工業代表取締役会長CEOの相良暁氏が登壇。開会の挨拶を行いました。

 「オプジーボの国内承認から10年、推定19万人の患者さんに治療を提供でき、よく効いた患者さんから感謝のお手紙をいただいたこともありました。この10年間で、がん免疫療法の認知度は高くなってきましたが、まだ一般の方々にとってはよくわからない部分も残っていると思います。この機会に、改めてがん免疫療法の良いところや課題を知っていただければと思います」

 次に、同社メディカルアフェアーズ統括部長の高井信治氏が登壇し、免疫チェックポイント阻害薬を用いたがん免疫療法について解説するとともに、同社が医師100人・がん患者さん900人を対象に実施した、この治療法に関する調査結果を報告しました。

 「製薬企業は医療従事者に対してがん免疫療法の啓発活動を行い、免疫チェックポイント阻害薬の正しい認知向上に努めてきました。一方で、患者さんやご家族に対して、がん免疫療法を正しくご理解いただくための情報発信が求められています。免疫チェックポイント阻害薬は、既存の薬物療法とは異なる副作用がありますので、この点に関してもがん免疫療法の正しい理解促進に向けて情報発信に取り組んでいきたいと思います」

 続いて、近畿大学医学部内科学腫瘍内科部門主任教授の林秀敏先生による「免疫チェックポイント阻害薬ががん治療に与えたインパクト」と題した講演が行われました。林先生は、メッセージとして、次のように述べました。

 「免疫チェックポイント阻害薬の登場はがん医療を変え、進行期のがん患者さんでも新たな希望が生まれました。よく効く患者さんは多くはないという課題もありますが、希少がんを含む多くのがん種に適応され、周術期や放射線治療との組み合わせなどさまざまな治療の選択肢も増えました。その一方、免疫チェックポイント阻害薬による治療は、頻度は少ないものの、診断が難しく時には致死的となる免疫関連の有害事象があります。医師の側も学ぶべきことが多くあり、副作用のマネジメント法に関する教育プログラムも学会や大学など、幅広い場で提供されています」

 その後、NPO法人がんノート代表理事の岸田徹氏、がん患者さんの清水公一氏、林美穂氏による「AYA世代のがん治療~闘病生活の悩みと最新治療への期待」と題した座談会が行われました。

 免疫チェックポイント阻害薬という新たな治療選択肢が増えることで、患者さんにとってどのようなインパクトがあったか、というテーマの中で、林氏は次のように述べました。

 「当時医師から、5年前10年前だったら助からなかったかもといわれました。免疫チェックポイント阻害薬という新たな治療薬ができ、まだ助かる道がまだあるのかもという希望がもてました」

 「今後のがん治療への期待、ご自身の今後の目標」について、清水氏は、次のように述べました。

 「2012年当時多発脳転移があるステージ4の肺がんと診断され、治らないと言われていました。しかし、患者会で話を聞く限り今は同じステージ4の肺がんでも治らないと言われない人が多いということでした。10年前の医学の常識と今の常識が、免疫チェックポイント阻害薬によって変わったのではないかと思います」

 座談会の最後に、ファシリテータを務めた岸田徹氏は、次のように述べました。

 「今、患者さんは次の治療に期待をしています。治療法のないがん患者さんとって、免疫チェックポイント阻害薬の登場は、新しい治療として1つの光となっています。皆さんと一緒に、常識を変えていけるようになっていければいいと思っています」

 最後に、ブリストル・マイヤーズ スクイブ社代表取締役社長のスティーブ・スギノ氏が閉会の挨拶として、次のように述べました。

 「日本で初めて承認されたオプジーボの導入から10年を迎えました。本日のセミナーを通じて、この画期的な治療法によるがん患者さんや社会貢献への道のりをご理解いただければと思います。弊社の情熱の源泉は、深刻な病気を抱える日本の患者さんにお役に立てるように革新的な医薬品を開発し提供することです。患者さんの人生の改善に寄与するオプジーボをはじめとした新たながん治療を創出してきた実績があります。オプジーボは、日本国内で15の適応症をもち、この10年で19万人の患者さんに貢献しました。また、数えきれないほどの患者さんの生存の延長につながる治療の選択肢を提供できることを誇りに思っています」