光免疫療法の新たな光照射方法、側方照射型光ファイバーの有効性を実証
2024/09/18
文:がん+編集部
光免疫療法における新たな光照射方法として、側方照射型光ファイバーの有効性が証明されました。従来の照射法と比べ、狭いスペースでも均⼀に光照射が可能で、食道などの狭い空間での光免疫療法に有用な方法であることが示唆されました。
LELファイバーを用いた側方への光照射、食道がんのような狭い場所での光免疫療法を行う際に有用
関西医科大学は2024年8月8日、光免疫療法において光を側方に照射する側⽅照射型光ファイバー「LELファイバー」の有効性を実証したことを発表しました。同大学附属光免疫医学研究所基盤開発部門の鈴木基史講師、同研究所小林久隆所長・特別教授らの研究グループによるものです。
光免疫療法では、十分な量の光をがんに照射することが必要なため、がんの位置や大きさに合わせて適切に光を照射することが重要です。現在の臨床では、体表面にある腫瘍に対しては光を前⽅に照射するフロンタルディフューザー、深部にある腫瘍の治療では、カテーテルについた針を腫瘍に刺してカテーテルに光ファイバーを挿⼊することで腫瘍内部から光を照射するシリンドリカルディフューザーを使⽤しています。しかし、この2種類のディフューザーでは、喉の奥側のような狭い内腔に位置するがんへの照射は困難であり、将来的にさまざまな部位のがんの治療に光免疫療法を適応するためには、狭い空間にでも照射可能な⼿法が必要です。
研究グループは、がん細胞を皮下移植したマウスに対してLELファイバーを用いた光免疫療法の実験を実施。その結果、がんの増殖が抑制され、LELファイバーを用いた照射は従来の光免疫療法と同様にがん治療に有効であると示されました。次に、食道がんのような狭い内腔に位置するがんに対し、内視鏡を用いて光を照射することを想定し、内腔20mmの筒の中から従来型のフロンタルディフューザーとLELファイバーを比較する動物実験を実施しました。がん組織に対する光の透過性を蛍光観察により評価した結果、LELファイバーはフロンタルディフューザーに比べてより均⼀にかつ深部まで光を届けることができることが明らかとなりました。これらの結果から、LELファイバーを用いた側方への光照射は狭い場所での光免疫療法を行う際に有用であることが⽰唆されました。
研究グループは、次のように述べています。
「本研究により、光免疫療法における光照射の新たな選択肢として LEL ファイバーを⽤いた側方照射が有用であることが示されました。今後の光免疫療法の発展および適応拡⼤に役立つことが期待されます」