HPVワクチン接種の副反応に関する論文の欠陥をイラストで解説した論文が発表

2024/09/25

文:がん+編集部

 HPVワクチン接種について正しい理解を促すため、副反応に関する論文の欠陥をわかりやすくイラストで解説した論文が発表されました。

「HPVウイルス粒子とHPVワクチンの違い」「HPVワクチン分子相同性仮説の誤り」「HPVワクチン副反応マウス再現実験の誤り」などについて解説

 近畿大学は2024年8月20日、HPVワクチンの副反応の根拠とされてきた2種類の説に関する論文について、科学的欠陥をわかりやすく解説した特集論文を発表したと報告しました。同大学医学部産科婦人科学教室の城玲央奈助教と同微生物学教室の角田郁生主任教授によるものです。

 HPVワクチンの薬害訴訟では、HPVワクチン接種後に副反応がおこる根拠として複数の論文が使用されていますが、専門性の高さから、これまで論文内容の信頼性について評価されていませんでした。

 HPVワクチン接種による副反応の根拠とされているのは、「分子相同性仮説」です。この仮説は、HPVワクチンの主成分であるウイルスに含まれるL1というタンパク質が、ヒトの脳などにあるタンパク質と分子レベルで類似しているため、HPVワクチン接種でできたL1に対する抗体がヒトの脳などにも結合して障害が生じるということをコンピュータで検証した研究結果でした。

 研究チームは、この仮説が免疫学の基本原理から検討すると破綻しており、また、実際にL1に対する抗体がヒトの器官に結合するという証拠はないことを先行研究で明らかにしていました。

 また、HPVワクチンをマウスに接種すると神経系の障害が起こるという論文もありますが、これらの論文は研究手法などに問題があることから、論文の掲載雑誌から掲載を撤回されています。

 今回発表された特集論文は、「HPVウイルス粒子とHPVワクチンの違い」「HPVワクチン分子相同性仮説の誤り」「HPVワクチン副反応マウス再現実験の誤り」などの内容を、ウイルス学や医療関係の専門家だけでなく、一般の方にも正しく理解できるように豊富なイラストによりわかりやすく解説したものです。

 研究代表者である角田主任教授は、次のように述べています。

 「HPVによる子宮頸がんは10代から発症することがあり、また中咽頭がんの原因としても知られ、米国では男性の中咽頭がんは子宮頸がんの患者数を上回ります。HPVは、性行為で感染しますので、ワクチン接種は自分とパートナーの両方をがんから守ります。また、HPVはヒトにしか感染できないウイルスなので、世界の全ての男女にワクチンが接種されれば、(やがては種痘で天然痘ウイルスが地上から根絶されたように)、HPVも地上から根絶できると考えています」