早期肺腺がん、術後再発を予測するバイオマーカーの特定に成功

2024/10/11

文:がん+編集部

 手術検体の迅速検査で、早期肺腺がんの術後再発を予測できるバイオマーカーの特定に成功しました。

マイクロRNAの特定構造の合成優位性を示すD-score、早期肺腺がんの術後再発リスクを予測できる可能性

 国立がん研究センターは2024年9月2日、早期肺腺がん術後再発を予測できるバイオマーカーの特定に成功したことを発表しました。同研究センター研究所分子発がん研究ユニットの土屋直人ユニット長、秋田大学大学院医学系研究科・器官病態学の後藤明輝教授、福島県立医科大学・医学部・消化管外科講座の河野浩二教授、齋藤元伸講師、広島大学大学院医系科学研究科・細胞分子生物学の田原栄俊教授、高橋陵宇准教授らの共同研究グループによるものです。

 肺がんは早期で発見されても約半数は術後に再発することが知られています。そのため、術後再発リスク、特にがんの特徴を踏まえて迅速に把握することは患者さんに適した術後の医療選択のために貴重な情報とされています。

 これまでの研究で、がんの細胞中には、がんと関連するマイクロRNA「miR-21-5p」だけでなく、その末端の配列がわずかに異なる「miR-21-5p+C」が多く存在することがわかっていました。研究グループは、どちらのマイクロRNAが有意に合成されることが、がんの悪性化に重要なのかを検討するため、外科的切除された肺腺がんの手術検体を利用して2つのマイクロRNAを定量化しました。その結果、肺腺がんではmiR-21-5p+Cの合成異常が顕著であることがわかりました。

 そこで、miR-21-5p+Cの合成優位性を「D-score」として数値化し、患者さんの予後との関連を調べたところ、D-scoreの高い肺腺がん、特にステージ1と2の早期では、再発リスクが極めて高いことがわかりました。

 研究グループは展望として、次のように述べています。

 「本研究の成果は、早期ステージの肺腺がんの再発を予測する診断法開発へと応用することが期待されます。また、腫瘍特性を把握しているため、治療奏効性の予測マーカーとして利用することも期待できます。D-scoreは、微量の手術検体を用いて定量的RT-PCR法で迅速に検出することが可能であるため、検査のための患者さんへの新たな侵襲がなく(非侵襲)、医療経済的にも有用な新しい診断法の開発が次の目標となります」