標的タンパク質分解誘導薬E7820、予測精度高いマウスモデルで胆道がん・子宮体がんの腫瘍縮小効果を示唆

2024/10/22

文:がん+編集部

 標的タンパク質分解誘導薬E7820のがん種横断的な薬効評価を、患者さん由来のがん組織を免疫不全マウスに移植した患者由来組織移植(PDX)モデルで実施。胆道がんでは58.3%、子宮体がんでは55.6%で腫瘍の縮小が観察されました。

E7820の日本人における忍容性を含む安全性評価と探索的な有効性評価を目的とした医師主導治験「CIRCUS」を開始

 国立がん研究センターは2024年9月12日、エーザイ株式会社が創製した新薬候補品である標的タンパク質分解誘導薬E7820について、医師主導治験「CIRCUS」を開始したことを発表しました。この試験では、PDXモデルを用いて確認された、有効性が期待されるがん種とバイオマーカー情報に基づき、日本人における忍容性を含む安全性評価と探索的な有効性を評価することを目的としています。

 研究グループは、日本人がん患者さん由来の腫瘍組織移植モデル「J-PDX」のライブラリーを用いて非臨床試験を行い、42のPDXモデル(膵臓がん12モデル、胆道がん12モデル、胃がん9モデル、子宮体がん9モデル)でE7820の薬効を評価。その結果、E7820 100mg/kg投与によって42モデル中16モデル(38.1%)、胆道がんでは12モデル中7モデル(58.3%)、子宮体がんでは9モデル中5モデル(55.6%)で、腫瘍の縮小が観察されました。また、胃がんは33.3%、膵臓がんは8.3%で、がん種によって効果が異なることがわかりました。

 さらに、E7820の腫瘍縮小効果と相関するバイオマーカーの探索を実施。腫瘍縮小効果が認められたPDXモデルでは、BRCA1、BRCA2、ATMといった相同組換え修復関連遺伝子(DNA修復機構の1つ)の変異が高頻度に認められ、当該遺伝子変異がE7820の有効性のバイオマーカーとなる可能性が示唆されました。

 これらの結果に基づき、国立がん研究センター中央病院と東病院は、固形がんに対するE7820の日本人における安全性および有効性を評価する第1相「CIRCUS」試験を開始しました。

 同研究センターは展望として、次のように述べています。

 「企業での創薬開発に国立がん研究センターのJ-PDXライブラリーを用いることで、新規薬剤候補に対する薬効評価と有効性予測バイオマーカーの同定、さらには臨床試験の立ち上げまでを速やかに実現することが可能となりました。本試験において、E7820の忍容性を含む安全性の確認および推奨用量を決定した後、国立がん研究センターとエーザイは、特定のがん種やバイオマーカーを有する固形がんに対する有効性を確認する第2相さらには承認申請用試験の実施を検討し、薬事承認をめざしてまいります。また、本研究で構築したシステムを、新規抗がん剤開発を加速させる創薬研究システムとして確立をめざします」