【週刊】がんプラスPickupニュース(2025年2月10日)
2025/02/10
文:がん+編集部
免疫細胞を活性化させてがんを攻撃させるナノ粒子サイズの細胞膜小胞の開発に成功
慶應義塾大学は2025年1月28日、がんに対する新しい治療法として、免疫細胞を活性化させてがんを攻撃させるナノ粒子サイズの細胞膜小胞の開発に成功したことを発表しました。
体内の免疫細胞の1つであるT細胞を活性化させ、がん細胞を攻撃させる複数の製剤がすでに治療に用いられています。しかし、T細胞の十分な活性化には複数の分子による活性化シグナルが必要であるため、単一の薬剤で最適な活性化を行うことは難しいと考えられています。 研究グループはT細胞の活性化に関わる複数の分子を表面に搭載した細胞を準備して、その細胞膜を単離することで100~150nm程度のサイズの細胞膜小胞を作製。T細胞とがん細胞を混ぜた状態にこの細胞膜小胞を加えると、細胞膜小胞がT細胞に複数の活性化シグナルを同時に送り、活性化されたT細胞が特定のがん抗原を持っているがん細胞に対し強い攻撃反応を起こすことがわかりました。今後、新しいがん免疫療法製剤としての応用が期待されます。
GPC3陽性の切除不能な肝細胞がん患者さんの同定および治療を目的とした第1/1b相試験が開始
ペプチドリーム株式会社は2025年1月28日、放射性医薬品RYZ801と放射性診断薬RYZ811を評価する第1/1b相試験を開始したことを発表しました。
今回開始された第1/1b相試験では、GPC3陽性の切除不能な肝細胞がん患者さんの同定および治療を目的として、RYZ801の安全性・忍容性・線量・初期的な有効性とともに、RYZ811の安全性・忍容性・体内分布が評価されます。GPC3は、75%の肝細胞がんで過剰な発現が認められ、正常組織では全くまたはわずかしか発現がみられない胎児性抗原です。RYZ801は、このGPC3に選択的に結合する環状ペプチドに放射性物質225Acを結合させた放射線治療薬で、RYZ811と合わせて使用することにより治療と診断が同時に行われることを目的としています。
胃がん臨床試験データベースプロジェクト「ARCAD-Gastric」が始動
国立がん研究センターは2025年1月31日、同センター東病院とThe ARCAD FoundationおよびMayo Clinicが、世界的な胃がんの臨床試験データを収集・統合・利活用する胃がんデータベースプロジェクト「ARCAD-Gastric」を立ち上げ、3者で契約を締結したことを発表しました。
過去に行われた治験・臨床試験のデータを収集・統合・利活用するプロジェクト「ARCADデータベースプロジェクト」は、大腸がん領域において、約4万7,000例からなるグローバルデータベースの構築およびデータベースの利活用が進んでいます。ARCAD-Gastricでは、大腸がん領域から胃がん領域へ拡張させ、日仏米3つのデータセンターで同じデータベースを保有することにより、世界的な共同研究の仕組みをつくり、よりよい医療の提供を目指します。