スキルス胃がんに特異的に作用する薬剤を同定

2018/03/19

文:がん+編集部

スキルス胃がんのマウスモデルを用いて化合物スクリーニングを実施

GGN病変
画像はリリースより

 東京医科歯科大学は3月9日、化合物スクリーニングによりスキルス胃がんに特異的に作用する薬剤を同定したと発表しました。

 胃がんは、日本において2013年には罹患数が第1位、2016 年には死亡数が第3位となっているがんです。その中でも、スキルス胃がんは検査で早期発見しづらく、進行した状態で見つかり、リンパ節転移が多いことから、予後の悪いがんとして知られています。しかし、スキルス胃がんに特異的に作用する薬剤はまだ開発されていません。

 研究グループが開発したスキルス胃がんのマウスモデルの細胞株に対して、化合物スクリーニングを行い、がん細胞に特異的に作用する27種類の候補化合物を同定したといいます。研究グループは、その候補化合物のひとつである合成エストロゲン「mestranol」に注目しました。mestranolを含む女性ホルモンが、マウスのスキルス胃がん細胞株に対して、特異的にDNA傷害性の細胞死を誘導していることが示されたとしています。

 また、ヒトの胃がん細胞株の中でも、E-cadherin機能異常(変異または発現低下)細胞株が、女性ホルモンに対する感受性が高いことが明らかになったといいます。The Cancer Genome Atlas Networkが提供するヒトの胃がん公開データによれば、スキルス胃がんでない胃がん患者さんでは予後に男女差がありませんが、スキルス胃がん患者さんでは男性よりも女性の方が、有意に予後が良いこともわかったとしています。

 今回の研究結果により、「今後、スキルス胃がんに特異的に作用する薬剤の開発を進めていくことができるだけでなく、他のがんにも応用することで、より臨床的に有効性が高い抗がん剤を効率的に開発することができるようになると考えられます」と研究グループは述べています。

 この研究結果は国際科学誌British Journal of Cancerオンライン版で発表されました。