白血病に新たな治療の可能性、骨髄微小環境の制御で白血病マウスの生存期間を延長
2018/04/11
文:がん+編集部
急性骨髄性白血病細胞が骨髄内に潜むことを抑制
京都大学は4月6日、白血病の治療戦略の1つとして、抗がん剤治療に加えて骨髄微小環境(ニッチ)制御という新しい治療コンセプトを提示する研究結果を発表しました。
造血幹細胞は、赤血球・白血球・血小板、樹状細胞、ランゲルハンス細胞などの元になる細胞で、細胞分裂によって自分と同じ細胞をふやす能力も持っています。造血幹細胞は基本的には骨髄に存在し、隣接する細胞や細胞と細胞の間にある生体組織を支持したり、細胞の増殖や分化、制御などの役割をする細胞外基質との相互作用によって性質が維持されていると考えられています。こうした、造血幹細胞の性質を維持する骨髄微小環境のことをニッチと呼びます。
転写因子Runt-related transcription factor (RUNX)1 は、白血病発症と増殖・維持に重要な役割を担っています。そのため、RUNX1を抑制することが、白血病治療に有効な新規治療戦略であることが広く認められつつあります。しかし、RUNX1がニッチでどのような機能を果たしているか、RUNX1を抑制した場合に白血病細胞にどのような影響があるかは、よくわかっていませんでした。
ニッチは、大きく分けて骨芽細胞ニッチと血管内皮ニッチに分けられます。このうち血管内皮ニッチの1つであるE-Selectionは重要な因子であり、急性骨髄性白血病細胞は、血管内皮ニッチに接着することで骨髄内に潜むことが知られています。研究結果グループは今回、E-SelectinをRUNX阻害剤で制御することで、白血病細胞が骨髄に潜むことを抑制し、白血病マウスで生存期間を延長させることに成功したといいます。
研究グループは、「今後はRUNX阻害剤によるニッチ制御戦略の臨床応用が促進されることが期待されます」と述べています。