非小細胞肺がんの3次治療に対する治験結果を報告

2018/05/07

文:がん+編集部

 非小細胞肺がん(NSCLC)患者さんを対象としたPD-L1の発現率別に検証した治験の結果が報告されました。 免疫チェックポイント阻害剤であるデュルバルマブとトレメリムマブの併用療法、それぞれの単剤療法と標準的化学療法を比較した結果、PD-L1低発現・陰性では有効性が確認できないという結果でした。しかし、高発現の患者さんに対してのデュルバルマブ単剤療法は臨床的に意味のある死亡リスクの低減が見られたそうです。

PD-L1の発現率別に2つのサブスタディで評価

 英アストラゼネカ社は、4月24日に第3相試験ARCTIC試験の結果を発表しました。

 ARCTIC試験は、局所進行もしくは転移のあるNSCLCで前治療として少なくとも2つのレジメンの治療を受けた患者さんを対象としたものです。PD-L1低発現・陰性のNSCLC患者さんに対して、デュルバルマブとトレメリムマブの併用療法、デュルバルマブ単剤療法、トレメリムマブ単剤療法を標準的な化学療法と比較して有効性と安全性の評価が行われました(サブスタディB)。同時にPD-L1を高発現しているNSCLC患者さんに対してデュルバルマブ単剤療法と標準的な化学療法との比較も行われました(サブスタディA)。

 サブスタディBの結果は、主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)と全生存期間(OS)で統計学的有意差も臨床的に意味のある延長も認められなかったそうです。

 サブスタディAの結果は、統計学的有意差を検証できる設定ではなかったものの、デュルバルマブ単剤療法は、標準的な化学療法と比較して臨床的に意味のある死亡リスクの低減が示されたそうです。

 デュルバルマブは、PD-L1を標的にした免疫チェックポイント阻害剤です。PD-L1と選択的に結合することで、PD-L1とPD-1、CD80 の相互作用を阻害し、がん細胞が免疫細胞の攻撃から逃れられなくすることで抗腫瘍効果を発揮します。

 トレメリムマブは、細胞障害性T-リンパ球抗原4(CTLA-4)の活性を標的として開発中の新薬です。CTLA-4の作用を阻害することでT細胞を活性化し、がん細胞に対する免疫反応を増強します。

 アストラゼネカのグローバル医薬品開発担当エグゼクティブバイスプレジデント兼チーフメディカルオフィサーのSean Bohen氏は、「多くの前治療を受けた患者集団においてデュルバルマブおよびトレメリムマブの併用療法が統計学的に有意な生存期間の延長を示さなかったことは残念ですが、本試験において見られたデュルバルマブ単剤療法の臨床効果には勇気づけられましたし、ARCTIC試験の詳細データを今後の学会で発表することを楽しみにしています」とコメントしています。