切除不能胃がん トリフルリジン・チピラシル塩酸塩が全生存期間を有意に延長

2018/05/15

文:がん+編集部

 切除不能胃がん患者さんを対象としたトリフルリジン・チピラシル塩酸塩の有効性を評価した第3相臨床試験の結果、全生存期間を有意に延長する結果が示されたそうです。

治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸がんの適応薬が、胃がんでも有効性を確認

 大鵬薬品工業株式会社と仏セルヴィエ社は5月9日、既治療の切除不能胃がん患者さんにおいてトリフルリジン・チピラシル塩酸塩(製品名:ロンサーフ配合錠 T15・T20)とプラセボを比較した第3相臨床試験(TAGS試験)で、全生存期間(OS)を有意に延長したと発表しました。

 TAGS試験は、標準治療の効果がみられなくなった切除不能胃がん患者さんを対象に、トリフルリジン・チピラシル塩酸塩とベストサポーティブケア(BSC)のグループの比較と、プラセボとBSCのグループを比較した国際共同第3相臨床試験です。同試験の主要評価項目はOSで、副次評価項目は無増悪生存期間(PFS)、安全性と忍容性、QOL等です。同試験の結果、OSを有意に延長する結果が示されたそうです。

 トリフルリジン・チピラシル塩酸塩は、トリフルリジンとチピラシル塩酸塩を配合した薬剤です。トリフルリジンは、DNAの機能障害を引き起こすことで、がん細胞の増殖などを食い止める作用があると考えられています。チピラシル塩酸塩は、トリフルリジンの分解に関わるチミジンホスホリラーゼを阻害することで、トリフルリジンの血中濃度を維持する働きがあります。日本では現在、治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸がんの効能・効果で販売されています。

 日本では現在、切除不能胃がんの3次化学療法として、ニボルマブ(製品名:オプジーボ)とイリノテカンが推奨されています。近年、胃がんに対する治療成績の向上により、生存期間が過去10年間で飛躍的に延長されました。しかし、がんが進行すると多くの合併症を併発するため、強力な化学療法が実施できず、使用できる薬剤が制限される場合があります。切除不能胃がんに対する治療後期での生存期間の延長や症状緩和は課題であり、新たな治療薬剤の選択肢を増やすことが求められています。

 大鵬薬品は、切除不能胃がんの適応での早期申請を目指して、準備を進めていくとしています。

※がんへの積極的な治療を行わずに、症状緩和の治療のみを行うことです。