歯周病菌が大腸がんの発生に関与?

2018/07/03

文:がん+編集部

 大腸がん患者さんのがん組織と唾液に共通した細菌があることがわかりました。今後、口の中や腸内の細菌を調べることで大腸がんの簡便な診断法を開発できる可能性があるそうです。

大腸がんの簡便な診断法を開発できる可能性も

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画像はリリースより

 横浜市立大学は6月28日、大腸がん患者さんのがん組織と唾液に共通した菌株が存在していることを発見したと発表しました。この研究結果は、口腔内のF.nucleatum(フソバクテリウム・ヌクレアタム)という細菌が大腸がんに関与していることを強く示唆しているそうです。

 世界的に、大腸がんの病態に関わる腸内細菌の研究が進められています。2012年以降、F.nucleatumが大腸がんの病態や予後に悪影響をおよぼすという報告例が増えています。しかし、もともとF.nucleatumがヒトの腸内から検出されることは少なく、大腸がんでの感染経路はよくわかっていませんでした。

 F.nucleatumは、大腸がん患者さん以外でも多くの人が口腔内に持っている常在菌の一種で、歯周病の増悪化にも関与することが報告されています。今回の研究では、直近の抗生物質使用歴が無いなどの条件で選抜された14名の患者さんを対象に行われました。その結果、患者さん8名において、大腸がん組織と唾液の両方からF.nucleatumが検出されました。8名のうち6名患者さんでは、大腸がん組織と唾液におけるF.nucleatumの菌株が一致したそうです。このことから、口腔内のF.nucleatumが大腸がん組織に移行・感染していることが示されたとしています。ただ、現時点では詳しい移行・感染ルートはわかっていない点もあり、これらの解明は今後の課題だとしています。

 今回の研究で得られた知見について研究グループは、「口腔内や腸内の細菌を調べることによる大腸がんの簡便な診断法を開発できる可能性や、口腔内・腸内細菌を制御することで大腸がんの治療や予防につながっていく可能性を示しています」と述べています。