世界初、血液検査で確認された遺伝子変異に対するタグリッソの有効性を実証

2018/07/27

文:がん+編集部

 イレッサタルセバジオトリフ などで治療後、薬剤耐性になった患者さんに対する耐性遺伝子変異を確認する血液検査の有効性が確認されました。気管支鏡検査が困難な患者さんでも血液で検査ができるため、患者さんの負担軽減につながることが期待されます。

患者さんの負担軽減に期待

 近畿大学医学部は7月19日、医師主導第2相臨床試験を実施し、血液検査でEGFR T790M遺伝子変異が確認された肺がん患者さんへの、分子標的薬オシメルチニブ(製品名:タグリッソ)の有効性を世界で初めて実証したと発表しました。

 EGFR遺伝子変異がある肺がん患者さんにはEGFRチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI) が有効だとされています。しかし、多くの場合、1年程で効果が薄れ、抵抗性を示すようになります。その原因の約半数を占めるといわれているのが、EGFR T790M遺伝子変異です。オシメルチニブは、日本において、EGFRチロシンキナーゼ阻害薬に抵抗性のEGFR T790M変異陽性の手術不能または再発非小細胞肺がんに対する適応で承認されています。

 現在、EGFR T790M遺伝子変異を確かめるためには、気管支鏡検査などを再度行い、腫瘍組織を採取することが必要です。そのため、気管支鏡検査が難しい患者さんに限り、血液検査の実施が認められています。血液検査は患者さんへの負担が少なく、繰り返し採取が可能なことや、検査結果が出るまでの期間も短いなどの利点があります。

 しかし、オシメルチニブの効果を示す研究は、血液検査だけでEGFR T790M遺伝子変異が確認された患者さんを対象としたものはなく、この点では科学的根拠がありませんでした。これらの理由から、研究グループは、血液検査だけでEGFR T790M遺伝子変異が確認された患者さんに対するオシメルチニブの有効性を示すため、今回の臨床試験を実施しました。

 臨床試験の結果、腫瘍が縮小した人の割合は55.1%で、血液検査だけでもEGFR T790M遺伝子変異のある患者さんに対するオシメルチニブの有効性が実証されました。安全性データは他試験と同様だったそうです。

 今回の結果から、「患者さんへの負担が大きい内視鏡等による組織採取から、一部血液検査へ移行できる可能性がある」と研究グループは述べており、患者さんの負担軽減につながることが期待されます。