肺がんの基礎知識

肺がんとは

肺がんは、肺の気管、気管支、肺胞の一部の細胞が何らかの原因でがん化したもので、肺に発生する悪性腫瘍の総称です。進行するにつれてまわりの組織を破壊しながら増殖し、血液やリンパの流れにのって広がっていきます。肺は胸にある臓器で左右に1つずつあります。右側の肺は3つに分かれた構造で、上から上葉、中葉、下葉とよばれています。左肺は、上葉と下葉の2つに分かれ、右の肺と左の肺の真ん中に縦隔という空間があります(図1参照)。縦隔にある心臓、大血管、気管、食道などの臓器と肺は、胸膜と呼ばれる膜で覆われています。また、体内に酸素を取り入れるための構造として、口や鼻から続く気管から、木の枝のように気管支が広がり、その先に肺胞があります。肺胞の役割は、酸素の取り込みと二酸化炭素の排出です。

図1 肺の構造

肺の構造

肺がんの罹患率

国立がん研究センターがん対策情報センターの最新がん統計によると、2019年にがんで亡くなった人は、37万6,425人(男性22万339人、女性15万6,086人)でした。そのうち、肺がんは、男性で1位、女性で2位、男女合計で1位でした。2017年には、男性で4位、女性で3位、男女合計では3位だったので、死亡するがんとしての順位が2年で上がりました。一生のうち、肺がんが原因で死亡する確率は、男性では16人に1人(6.4%)、女性では40人に1人(2.5%)という統計があります(2019年データに基づく)。新たに肺がんと診断される人は、1年間で男女合わせて12万4,000人以上います(2017年データ)。40歳代後半から増加し、年齢が高くなるほど罹患率も高くなります。

肺がんの生存率

がんの生存率は、性別、生まれた年、年齢が同じ人と比べどのくらいかで示されます。統計データとしては、5年生存率と10年生存率がとられています。5年生存率は、がんと診断されてから5年後に生存している割合で、10年生存率は10年後の割合です。

肺がんの5年生存率は、男性が29.5%、女性が46.8%(2009~2011年診断例)、10年生存率は、男性が18.1%、女性が31.2%(2002~2006年追跡例)となっています。この生存率の割合は、早期の患者さんから進行した状態で見つかった患者さんまで、肺がん患者さん全体の割合です。

ステージ別の肺がん患者さんの5年実測生存率は、ステージ1で76.9%、ステージ2で45.7%、ステージ3で23.2%、ステージ4で6.0%、全症例で42.4%という統計※1があります。このデータから、より早期に治療を開始した人の方が、5年生存率が明らかに高いことがわかります。

肺がんを早期に発見し、早期に治療を開始するためには、検診が大切です。検診は、「胸部X線検査」と「喀痰細胞診」が有効な検診方法とされています。喀痰細胞診は、50歳以上で、喫煙指数が600以上の人が対象※2です。喫煙指数は、1日の喫煙本数×喫煙年数で算出します。1年に1度は検診を受け、気になる症状があれば、診察を受けましょう。

  • ※1:全国がん(成人病)センター協議会の生存率経堂調査(2010~2012年診断症例)による
  • ※2:喫煙中の人だけではなく、過去の喫煙本数も対象となります

肺がんの症状

肺がんで自覚できる症状は、咳、痰、血痰、発熱、呼吸困難、胸痛などがありますが、これらの症状は、早期ではほぼ見られません。咳や発熱などは風邪にかかったときにも誰もが経験したことのある症状です。咳や発熱のほかの症状も肺がん特有の症状ではありませんが、なかなか治らなかったり、症状がひどいなど気になるときは、早めに医療機関を受診して検査を受けることが大切です。

肺がんで比較的多くみられる症状として、「腫瘍随伴症候群」と呼ばれるものがあります。腫瘍随伴症候群では、顔が満月のように丸くなるムーンフェースや肥満、食欲不振、神経症状、意識障害などの症状が現れます。がん細胞が大きくなり体を圧迫することや、がん細胞の存在自体が局所的に影響することによる症状ではなく、がん細胞から分泌されるホルモンやサイトカイン、がん細胞に対する免疫反応が要因とされています。

肺がんの種類

肺がんの確定診断には病理検査が必要です。病理検査は、基本的には、病巣から組織を採取し、それを顕微鏡で調べることで、肺がんかどうかの診断と同時に組織型の分類も行われます。

肺がんは、組織型によって、「小細胞肺がん」と「非小細胞肺がん」に大きく2つに分けられます。非小細胞肺がんはさらに、「扁平上皮がん」「腺がん」「大細胞がん」の3つに分類され、ほぼ全てがこの分類に当てはまります。それ以外の特殊ながんも何種類かありますが、それらはごくまれで、肺がんの大部分は、小細胞肺がん、扁平上皮がん、腺がん、大細胞がんの4種類の組織型が占めています。

腺がんは、肺がん全体の60%を占め、次いで扁平上皮がんが多くみられ、大細胞がんや小細胞肺がんの割合は少なく、発症頻度は低いと知られています。

全体の60%を占める腺がんは、症状が出にくい、女性で多いなどの特徴があります。

肺がんは、喫煙との関連が大きく、たばこを吸う人は吸わない人に比べ、男性で4.4倍、女性で2.8倍という研究があります。特に、扁平上皮がんと小細胞肺がんは、組織は異なりますが、喫煙との関連が大きいといわれています。たばこを吸う人は禁煙、吸わない人も受動喫煙に注意することが、肺がんの予防につながります。

大細胞がんと小細胞肺がんは、増殖が速いという特徴があり、小細胞肺がんは転移しやすい性質という特徴もあります。

治療方針も、組織型によって異なります。肺がんの薬物療法が進歩した現在では、非小細胞肺がんの中でも、3つの組織型によって治療方針がかなり異なるため、肺がんのタイプをきちんと見極めることが必要とされています。

肺がんの分類

組織型特徴発生個所
非小細胞肺がん腺がん肺がんの約60%、症状が出にくい、女性の肺がんに多い肺の奥
扁平上皮がん喫煙との関連、症状は咳、血痰など肺の入口
大細胞がん増殖が速い肺の奥
小細胞肺がん喫煙との関連、増殖が速く、転移しやすい肺の入口

参考文献:日本肺癌学会. ”肺癌診療ガイドライン ―悪性胸膜中皮腫・胸腺腫瘍含む― 2020年版”.金原出版,2020.
全がん協加盟施設の生存率協同調査
国立がん研究センターがん情報サービス.がん登録・統計.最新がん統計

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