歯科医による術前口腔ケアで、術後肺炎発症率や死亡率が減少

2018/09/13

文:がん+編集部

 がん患者さんの術後肺炎発症率や死亡率が、歯科医による手術前口腔ケアによって減少することを、大規模な臨床データによって実証しました。

術後肺炎発症率3.8%から3.3%に、手術後30日以内の死亡率0.42%から0.30%に低下

 東京大学は8月24日、歯科医による手術の前に行う口腔ケアが、がん患者さんの術後の肺炎発症率や死亡率を減少させることを明らかにしたと発表しました。

 がん手術直後の患者さんは、体力が低下し、一時的に肺炎などにかかりやすくなります。術後肺炎の発症率は2.6~3.5%程度で、重症化すると死亡率が増加し入院日数が伸びることがわかっています。手術後に肺炎を発症する原因のひとつとして、口腔内や咽頭(いんとう)にある細菌を含む唾液を気管内に誤嚥してしまうことがあります。これまでも、歯科医が手術前に口腔ケアをすることで、口腔内を清潔に保ち、唾液中の細菌量を減らすことにより、術後肺炎の発症を低減できる可能性が理論的には示唆されてきました。しかし、大規模な臨床データを用いた効果を実証した研究はありませんでした。

 今回の研究は、厚生労働省のレセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)※1を用いて分析しました。対象は、2012年5月~2015年12月に頭頸部がん食道がん胃がん大腸がん肺がん肝臓がんの腫瘍切除・腫瘍摘出術を受けた患者さん50万9,179人です。そのうち8万1,632人(16.0%)が歯科医による術前口腔ケアを受けていました。

 分析の結果、歯科医による術前口腔ケアを受けた患者さんでは、術後肺炎の発症率が3.8%から3.3%に低下し、手術後30日以内の死亡率は0.42%から0.30%に低下していたそうです。がんの部位別に解析をした結果、とくに食道がん患者さんで効果が大きいことがわかりました。

 今回の研究結果から、がん手術前の患者さんに対する歯科医による口腔ケアは、術後肺炎の発症率と死亡率を減少させることが明らかになりました。研究グループは、「実際の医療現場における歯科医による術前口腔ケアの有用性について、医療従事者・患者の双方にとって重要な情報の一つとなることが期待されます」とコメントしています。

※1 全ての保険者のレセプト(診療報酬請求明細書)データを収集したものです。レセプトは、保険診療が行われた際に発行されるもので、患者さんが受けた検査や手術・処置、薬の処方などが記載されています。