EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がん、投薬順序で治療期間延長の可能性
2018/11/05
文:がん+編集部
EGFR遺伝子変異陽性の非小細胞肺がんの患者さんに対する1次治療でアファチニブ(製品名:ジオトリフ)投与後、オシメルチニブ(製品名:タグリッソ)を投与することで、化学療法の開始時期が遅らせられる可能性があることを示す研究データが発表されました。
ジオトリフ→タグリッソの順で投与した治療期間は27.6か月
独ベーリンガーインゲルハイム社は10月19日、実臨床による後ろ向き解析されたGioTag研究の結果を発表しました。
この研究の対象は、EGFR遺伝子変異陽性の非小細胞肺がんに対する第1世代と第2世代のEGFR遺伝子を標的とした分子標的薬によっておこる耐性メカニズムであるT790M遺伝子陽性がある患者さんです。
EGFR遺伝子変異陽性の手術不能または再発の非小細胞肺がんでは、ゲフィチニブ(製品名:イレッサ)、エルロチニブ(製品名:タルセバ)、アファチニブ、オシメルチニブが使われます。このうち、第3世代のオシメルチニブ以外の3剤では、T790Mという耐性が起こることがあります。この耐性が起こった後として使用可能な薬として承認されたのがオシメルチニブで、2018年8月には1次治療でも使用できるように適応拡大されました。
1次治療で耐性ができたあとにオシメルチニブを使用したほうがいいのか、最初からオシメルチニブを使用したほうがいいのかという投与順に関して評価するデータは、これまでありませんでした。
研究結果は、アファチニブの後にオシメルチニブを使用した治療期間の中央値は27.6か月だったそうです。また、エクソン19欠失(Del19)陽性の患者さんの治療期間の中央値は30.3か月と、アジア人の患者さんの治療期間の中央値は46.7か月で、特に有望な結果が見られました。さらに、2年間および2.5年間の全生存率※1は、それぞれ78.9%、68.8%でした。今回の結果は、アファチニブの後にオシメルチニブを使用する治療が、相当数の患者に対して持続的な臨床効果をもたらし、化学療法の使用開始時期を遅らせる可能性があることを示唆しています。
オットー・ワーグナー病院呼吸器・集中医療科の腫瘍内科医で本臨床試験の治験調整医師であるDr. Maximilian J. Hochmair氏は「利用可能な分子標的治療の選択肢が増えることに伴い、患者のアウトカム上の分子標的療法の複数の治療ラインによる効果を理解することが重要となります。GioTag研究の結果は、アファチニブとオシメルチニブを用いたシークエンシャル治療が、EGFR遺伝子変異陽性のNSCLC患者にとって有益な治療法であり、相当数の患者に対して持続的な臨床効果をもたらすことを示しています。また、これは重要なことですが、患者の化学療法開始時期を遅らせることを示唆しています」とコメントしています。
※1:患者さんの亡くなった原因ががんによるかどうかは関係なく、生存していた期間のことです。