イブランス、HR陽性HER2陰性進行・再発乳がんで全生存期間を改善

2018/11/20

文:がん+編集部

 ホルモン受容体陽性、HER2陰性の進行・再発乳がんに対する治験の結果が発表されました。パルボシクリブ(製品名:イブランス)フルベストラント(製品名:フェソロデックス)の併用療法に関して全生存期間※1の改善が認められたそうです。

イブランス、プラセボと比較して約7か月の全生存期間を改善

  米ファイザー社は10月20日、パルボシクリブのHR陽性/HER2陰性進行・再発乳がんに対するPALOMA-3試験の全生存期間データを発表しました。

 PALOMA-3試験は、内分泌療法後に進行したホルモン受容体(HR)陽性HER2陰性の進行・再発乳がん患者さんを対象とした治験。パルボシクリブ+フルベストラント併用療法とプラセボ+フルベストラント併用療法を比較した第3相試験です。同試験の結果、全生存期間は統計学的な有意差は認められなかったものの、約7か月の全生存期間の改善が認められたそうです。

 同試験で最も多く認められた有害事象は、好中球減少症、白血球減少症、感染症、疲労、嘔気でした。全生存期間の最終解析のために実施されている長期追跡調査期間でも、予期しない安全性に関するシグナルは認められなかったそうです。

 パルボシクリブはCDK4/6を阻害する経口薬です。CDK4/6は、細胞増殖を引き起こす細胞周期の調節に重要な役割を果たしています。パルボシクリブは、閉経後の女性では初期の内分泌療法としてアロマターゼ阻害薬との併用で、また、内分泌療法にて疾患進行が認められた女性ではフルベストラントとの併用で、HR陽性/HER2陰性の進行・再発乳がんの治療薬として、米国では承認されています。

 Robert H. Lurieノースウェスタン大学総合がんセンターのトランスレーショナルリサーチ担当副所長で、PALOMA-3試験のシニア研究者を務めたMassimo Cristofanilli医学博士は「PALOMA-3試験で認められた無増悪生存期間※2でのベネフィットの差が、全生存期間でも同様に約7か月の差として認められたことは臨床的に意味があり、注目に値します。進行・再発乳がんでは、試験期間よりも疾患進行後の治療期間の方が大幅に長くなることが多く、全生存期間で違いを示すことが難しいことを考えると、今回の結果は特に重要な意味を持ちます。この全生存期間データは、以前に示された無増悪生存期間のベネフィットとともに、患者さんにとって希望を与える結果であると考えます」とコメントしています。

PALOMA-3試験

対象:進行・再発乳がん
条件:内分泌療法による治療中または治療後に進行したホルモンHR陽性HER2陰性
フェーズ:第3相試験
試験デザイン:無作為化(2:1)・多施設共同・国際・二重盲検
登録数:521人
試験群:パルボシクリブ+フルベストラント併用療法
対照群:プラセボ+フルベストラント併用療法
主要評価項目:無増悪生存期間
副次的評価項目:全生存期間、客観的腫瘍縮小効果、奏功期間ほか

※1:奏効例(完全または30%の部分消失)で治療中にがんが進行せず安定した状態の期間のことです。
※2:患者さんの亡くなった原因ががんによるかどうかは関係なく、生存していた期間のことです。