新規リポソーム製剤、高い腫瘍縮小効果・免疫チェックポイント阻害剤との相乗効果を確認

文:がん+編集部

 がん組織に薬を選択的に送ることで薬効を高める新規リポソーム製剤として開発が進められている「FF-10850」に関する研究結果が発表されました。高い腫瘍縮小効果とともに、免疫チェックポイント阻害薬との併用投与では、単剤と比べて生存期間が延びるなど、さらに高い薬効を発揮するそうです。

効果を高め副作用を抑える、新規リポソームによるドラッグ・デリバリー・システムの可能性

  富士フイルム株式会社は11月13日、卵巣がんなどを適応とする抗がん剤「トポテカン(製品名:ハイカムチン)」を、新規開発を進めているリポソームに安定的に内包することに成功したと発表しました。

 リポソームは、生体膜の構成成分を使ってカプセル状にした微粒子で、薬を内包することができます。しかし、トポテカンはリポソームの膜を通過しやすく、従来のリポソームでは、がん組織に届く前に血液中に漏れてしまうという課題がありました。トポテカンは薬の半減期が非常に短く約80%の人で重篤な骨髄抑制が起こる問題もあるため、がん組織に確実に運ぶ必要があります。今回、同社は新規素材を配合することでリポソームの強度を高め、トポテカンを安定的に内包することに成功したそうです。

 今回発表されたのは、トポテカンを新規開発のリポソームに内包したFF-10850の有効性と忍容性を確認するための動物実験の結果です。ヒト由来の卵巣がん細胞を移植したマウスに、トポテカンとFF-10850をそれぞれ投与し、有効性と忍容性を確認したところ、FF-10850は1/10の投与量で、トポテカンと同程度の有効性を示しました。さらに、免疫チェックポイント阻害薬との併用投与も行われ、マウス由来の大腸がん細胞を移植したマウスに、免疫チェックポイント阻害薬とFF-10850の単剤投与と併用投与を実施したところ、免疫チェックポイント阻害薬単剤による生存期間の中央値が19日だったのに対し、FF-10850単剤では27.5日、併用投与では40日を超えていたそうです。

 なお、同社はゲムシタビン(製品名:ジェムザール)を内包したリポソーム製剤「FF-10832」の開発を進めています。同剤では、ゲムシタビンを血中で安定化させ、さらに患部へ集積させて薬を放出することを確認。現在、米国で第1相試験を実施しています。

 今後、従来の抗がん剤もこうした薬を的確にがん組織に運ぶドラッグ・デリバリー・システムが開発されることで、副作用を抑えて効果を高める薬剤になることが期待されます。