ゾスパタと化学療法併用、急性骨髄性白血病に対して高い奏効率を示す

2018/12/12

文:がん+編集部

  急性骨髄性白血病を対象としたギルテリチニブ(製品名:ゾスパタ)と強力な化学療法との併用による治験の最新結果が米国血液学会で発表されました。未治療のFLT3遺伝子変異陽性の急性骨髄性白血病患者さんに対して高い奏効率を示したそうです。

ゾスパタ120mg投与のFLT3遺伝子変異陽性患者さんの複合完全寛解率は100%

  アステラス製薬株式会社は12月4日、2018年第60回米国血液学会の年次総会で、ギルテリチニブと強力な化学療法との併用による第1相試験の最新結果を報告したことを発表しました。

 この第1相試験は、未治療の急性骨髄性白血病の成人患者さんを対象として、ギルテリチニブを寛解導入療法および地固め療法と併用した際と、維持療法としてギルテリチニブを単独投与した際の安全性と忍容性、有効性を評価するものです。

 同試験には、68例が組み入れられ、このうち66例を安全性解析対象例としました。このうち36例にFLT遺伝子変異が認められています。1~14日目にギルテリチニブを1日40mgの投与を受けた患者さんの2例で、用量制限毒性である好中球減少症、血小板減少症、駆出率の低下が認められましたが、投与スケジュールの変更後は用量制限毒性は認められなかったそうです。また、1日200mgを投与された2人の患者さんに、用量制限毒性(好中球減少症、好中球減少性腸炎)が認められ、最大耐用量と推奨される拡大用量は、1日120mgに設定されました。

 第60回米国血液学会の年次総会でデータを発表したJohn Hopkins Sidney Kimmel Comprehensive Cancer CenterのKeith W. Pratz医師は「急性骨髄性白血病は生命に関わる疾患であり、できるだけ早期に治療を開始することが必要です。急性骨髄性白血病の標準治療は、寛解導入療法と地固め療法ですが、特定の遺伝子変異を標的とした新たな治療法は、急性骨髄性白血病患者さんを治療する医師にとって重要な選択肢となり得ます。これらのデータは、急性骨髄性白血病の一次治療において、FLT3遺伝子変異を有する患者さんの治療をどのように行うべきか、科学的な理解を深めるうえでも有益です」とコメントしています。

 ギルテリチニブは、2018年9月に「再発または難治性のFLT3遺伝子変異陽性の急性骨髄性白血病」を効能・効果として日本で承認され、同11月に米国食品医薬品局からも承認を取得しています。

主な解析結果は、以下の通りです。
・ギルテリチニブ120mg投与群のFLT3遺伝子変異陽性患者さんの複合完全寛解率は100%。
ダウノルビシン(製品名:ダウノマイシン)による寛解導入療法を受けたFLT3遺伝子変異陽性患者さんの複合完全寛解率は100%。
イダルビシン(製品名:イダマイシン)による寛解導入療法を受けたFLT3遺伝子変異陽性患者さんの複合完全寛解率は66.7%。
・ギルテリチニブ80mg/日以上の投与を受けた患者さんのうち、FLT遺伝子変異陽性患者さんの複合完全寛解率は90.3%。

10%以上の患者さんに発現したグレード3以上の有害事象は、以下の通りです。
・発熱性好中球減少症:63.6%
・血小板減少症:19.7%
・白血球減少:19.7%
・好中球減少症:19.7%
・好中球減少:16.7%
・貧血:13.6%
・敗血症:10.6%